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Archive: 2011年07月  1/4

続 星月夜の少年人形 15

紘一郎は苛立ちを抱えたまま、花村のマンションを訪ねた。「今時分、誰だ・・・?」ドアフォンの画像に、紘一郎が頭を下げる。「一人で来るのは珍しいな。ま、入れよ。」笑顔で招き入れた。「花村さん、あの・・・桃李は来てませんか?」硬い表情に、何かあったのだろうと想像がつく。「桃李が、どうかしたのか?」椅子をすすめ,飲み物を取りに行った花村は、仕事中だったのだろうか。パソコンの画像が動いていた。花村は、成瀬と...

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続 星月夜の少年人形 16

花村の携帯が、騒ぎ立てた。「はい、花村。・・・ああ?桃李が、わんわん泣いてる?だろうなぁ・・・」ちらと、紘一郎を見やって「スワンで、ちびトラが潰れているそうだ。回収して来い。」と笑いかけた。まるで追い払うように、ひらひらと手を動かした。*******ゲイバースワンのカウンターに、突っ伏して桃李は涙でぐちゃぐちゃになっていた。「何とかしなさい。営業妨害よ。」スワンのママはすっかり機嫌を悪くして、腕組...

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続 星月夜の少年人形 17 【最終話】

紘一郎は、モデルの桃李にそっと触れた。ぴくりと、身体が震え身体が生理的に、逃げようとする。「桃李・・・こっち向いて、おれのこと見て。いつも、おれの後を追ってきたよね。」覗き込む紘一郎に、桃李ははにかんだように頷いた。施設に入ってからは、紘一郎だけが自分の傍にいてくれた。「おれにはいつだって紘ちゃんしかいなかったよ・・・。花村さんのこと好きだったけど、花村さんは絶対おれの方は見てくれないんだ。いつだ...

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続 星月夜の少年人形 番外編 「それから・・・」

スケジュール帳を開いて、花村は贅沢な溜息を付いた。どのページも、真っ黒に埋め尽くされていた。「紘一郎に合わせて、休み入れろったって無理だよ、桃李。悪いが、当分休みは無しだな。」「え~ん。愛する紘ちゃんに、逢いたいよ~~。」「一緒に住んどいて、何を言ってるんだ。嘘泣きを止めて、きりきり働けっ。」「くそぉ~~、いたいけな少年を、過酷な労働条件で働かせるって、労働基準局にちくってやる~!」そう言って、桃...

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もう一枚の挿絵 桃李

連載途中で、「そうだ、挿絵を描こう!」と思ったのは良かったのですが、半端なく手が遅いので描くのに手間取りました。アナログで描線を起こし、スキャンして色を塗ってゆきます。フォトショップエレメンツ9を買いました。いつか、使いこなしたいです。バージョンを変えた、桃李です。がんばったので、見てください。一緒にあげれば良かったのですけど。(〃ー〃)褒めていただいてうれしかったので、こっちも上げてしまいます~。...

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びいどろ時舟 作品概要

未来世界の住人×花街で働く少年   時代物タイムトリップ 丸山は、江戸の吉原、京の島原と並び日本三大花街「三場所」のひとつに数えられた遊郭である。長崎丸山花街に、妓楼「水月楼」はある。丸山一の廓「水月」抱えの睡蓮花魁は、阿蘭陀の紅毛人と恋をして、命が危うくなるほどの難産の末、子どもを二人産んだ。二人は、母の元ですくすくと大きくなってゆく。花街で生まれた、娼妓の子供は花街からは出られない定めだった。自分...

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びいどろ時舟 1

「江戸の気風に京都の技量、長崎の衣装で三拍子揃う」流行り歌にも唄われた、絢爛な衣装だけを表から眺めていると、世俗の持つ廓の悲しい印象からは多少外れているようにも思う花街だった。だが、廓全体を眺めてみると塀や石垣で周囲をぐるりと囲まれていて、閉ざされた場所なのには変わりなかった。長崎丸山は他の遊郭と違って、鎖国の日本にあって、唯一外国人の出入りが許された限られた場所だ。長崎の町民や、海外貿易を行う上...

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びいどろ時舟 2

母が亡くなってからは、それまで住んでいた狭い部屋も、あっさり取り上げられた。千歳と鏡は、離れて暮らすことになった。皮膚の薄い子どもの指を酷いあかぎれにしながら、姉さんと呼ぶ遊女の腰巻や汚れ物を山ほど洗濯するのが見習い男衆、鏡の日課になった。風呂の薪を割り、下足番をし、男衆に思いつきでこづかれ、たまには乱暴に殴られた。鏡の身体に、いつもどこかしこに痣が付いていた。朝から晩まで、鏡はさまざまな雑用を押...

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びいどろ時舟 3

目もとにも紫色の痣をこしらえてうつむく鏡の、禿(かむろ)に揃えられた髪の色と瞳は珍しい明るい鳶色をしている。よく見れば、丸山一と言われる今をときめく花形花魁、千歳太夫と同じものだ。父に似た肌は蒼白と言っていいほど真白になり、床に付いた指先は、意思に反してふるふると小刻みに震えていた。煙草盆にいらいらと長煙管を打ち付けたら、鏡の背中がぴくりと怖じた。置屋のおかみは垢じみて小汚い身形(みなり)をした、...

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びいどろ時舟 4

「忘八」という二つ名を持つ女将のつま先を、ぽたぽたと涙を零しながら、鏡はじっと見つめていた。時々締め付けるように胸が痛くなり、引きつるような咳が出るのは、もういけなくなった姉さん達の吐く瘴気を、長い間吸ってきたからかもしれないと鏡は思う。肺をやられて血を吐く姉さんたちの息は、真夏の生臭い魚の腐った内臓の匂いがした。うっかり吸い込むと、肺の奥の深い所にまで届いて、そこから少しずつ腐っていくような気が...

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