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Archive: 2011年06月  1/3

星月夜の少年人形 22

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冷たい爬虫類の虹彩が光り、非力な獲物を追い詰めていた。優月は無言で、シティホテルの住所を握り締め、男の前から退出しようとした。この男と何か会話を交わすと、無力を思い知るばかりのような気がしていた。「ああ、優月君。ちょっと待ってください。買い物があるでしょう?すぐに必要なものは揃えてあるはずですが、足りない物がありましたら、こちらのカードをお使いになってください。」「はい・・・。」少しくらいのお金は...

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星月夜の少年人形 23

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しばらくの間、優月の住処となったシティホテルには、帰宅とほぼ同時に家庭教師が訪れ、日替わりで数時間ずつ語学の勉強を強いられた。ついていけない学校の勉強がしたくても、そちらの方はなかなか時間が取れなかった。自分で何とかしろという事らしい。予習復習、単語の書き取りに追われ、寝る時すらCDを流しながら発音に慣れるように言われた。優月は自分なりに、対策を立てて理解できるところまで遡り、判らないところは片っ...

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星月夜の少年人形 24

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優月がいなくなって二か月たち、優月の母は、やや早産ではあったが可愛い女の子を出産した。楽しみにしていた優月が知れば、どんなにか喜ぶだろうかと思う。母は過去へ繋がる場所へ電話をかけた。「美晴です。はい、ご無沙汰しております。土光の娘です。」美晴は電話口で相手をおばさまと呼んでいた。電話の向こうで華やいだ声がやがて嗚咽に変わった。ずっと行方が分からなかった姪の久しぶりの声に咽んだ。「おばさま、教えてい...

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星月夜の少年人形 25

成績表に落された視線が、やがて優月の元へと返ってくる。無能呼ばわりされるかと、自然に優月は身構えていた。「・・・まあ、こんなものでしょう。あの学校で、優月君はずいぶん頑張っている方だと思いますよ。」「えっ?」辛辣な言葉を想像していた優月は拍子抜けしてしまった。進学校の順位など気にする必要はないと、榊原は珍しく笑みを湛えて優月に告げた。「わたしもあの学校の卒業生ですけど、最初は1点違うだけで順位がか...

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星月夜の少年人形 26

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満天の星空。ゆっくりと星々が廻ってゆく。優月はじっと天井を見つめていた。優生のところで見た、小さなプラネタリウムが偽りの天体を映し出している。「気が付いたか?」声の方を見ることなく、優月はじっと星空を見つめ、静かに涙は目尻を滑り零れ落ちていた。声をあげる方法を忘れたように、どこかに感情を忘れたように長い間、顔を覆うこともなく優月は泣いていた。「おまえ、綺麗な顔してるのな。そういう泣き方してると、後...

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星月夜の少年人形 27

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優月は夢を見ていた。ホテルの居心地のいいはずのベッドよりも、薄い布団にくるまったほうが安心できるようにいで眠っていた。優月を覗き込んだ桃李と青年が、静かな寝息にふっと笑って顔を見合わせた。矢口桃李、重松紘一郎という名の二人に拾われて、その場所がどんな所かも知らず優月はまどろんでいた。夜半、熱で汗をかいたせいで喉の乾いた優月は、薄明かりの中、流しに水を求めた。細く開いた扉の向こうでくすくすと笑う声...

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星月夜の少年人形 28

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優月は、戸惑っていた。優生以外の男に、大人のキスをされた。追い詰められて吐精した。どこを触られても反応し感じ、ぶってしまった。倒れ込んだ優月の頭上で・・・カシャと機械音が響く。振り返れば、見せられた桃李か紘一郎の携帯に、固く目を閉じた自分の全身が写っていた。腹の上に吐き出したものが散っている扇情的な写真を見て、優月は焦った。「や・・・やめて。こんな写真、撮らないで。消して、桃李くん。」「何言って...

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星月夜の少年人形 29

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どうやって自分の部屋へ帰ってきたか覚えていなかった。朦朧と人垣の中を漂いながら帰ってきた気がする。余りに思慮のたりない優月だった。「ほんと、世間知らず・・・」と、自嘲するように呟いた。こんなことを優成が知ったら、なんと言うだろう。「馬鹿だな、優月。」そう言って優しく抱きしめてくれるだろうか。それとも、誰にでもついていくから、そんな目に合うのだと責めるだろうか。それでもいい、逢いたかった。通っている...

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星月夜の少年人形 30

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塔矢は優月の首に掻きついて、離れようとしなかった。「塔矢。お兄ちゃんになったら、抱っこやめるんじゃなかったの?」「・・・兄ちゃ~ん・・・。」塔矢の涙のわけを優月は知っていた。我慢をして来たのは塔矢も同じなのだろうと思う。そこに榊原がいなかったら、優月も本当はこんな風に塔矢を抱きしめて声を上げて泣いていたかもしれない。優月の荷物に、榊原が手を伸ばした。「優月君のご両親には、先にあちらへ行っていただき...

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星月夜の少年人形 31

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どこか美晴にも似た眼光鋭い老人が、ちらと神村に視線をくれた。「その男はなんだ。出て行った男とは、顔が違ったようだな。」美晴は、父親を軽くにらんだ。「どうせ、あの人とは直ぐに別れたことも、知っているんでしょう?・・・相変わらず、意地悪ね。」「別れたのなら、さっさと家に帰ってくれば良かったんだ。いくらでも結婚相手なら見つけたやったものを、意地を張りおって。」「お父様に似て、わたしは意地っ張りなのよ。結...

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