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Archive: 2011年02月  1/3

深い森の奥の魔導師・17

*****************************魔軍の編成は、かつて天界と戦って負けて以来、蹴落された力天使が担っていた。天界は堕天使達がかつて住んでいた、光に満ち溢れた清浄な場所。どれだけ焦がれても、二度とそこに駆け上がることは許されない。純白の羽を持つもの以外は、天国の門をくぐれない。邪なものがくぐろうとしたとき雷が矢となって降り注ぎ、その身は再生もかなわぬほど焼かれる。天界で一番神...

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夢の欠片(かけら)・4

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耳まで熟れた征四郎が、心酔する奏に一目会うなり恋に落ちたのも、不思議な話ではない。如月奏の、幸福の断片はそこかしこに溢れていた。***************************あれから毎日、奏が自社に着くと、必ず征四郎が顔を出す。「如月さん!」「おや。征四郎くん。また、來たの?」「はい!会いたかったです。」駆け寄る征四郎の満面の笑顔に困ったような顔を向けて、奏が肩をすくめた。少し冗談が過ぎた...

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深い森の奥の魔導師・18

瘧(おこり)でおきる高熱のように、疼く体を抱きしめてトトはよろよろと魔界への入り口に近づこうとしていた。******************************「危ないっ、トトっ!」どんと体当たりされて、トトの瞳に正気が戻る。「あ・・・トモ・・?俺、どうしたんだろう。頭の中でキュラが笑って、こっちに来いよ、トトって言ったんだ。だから・・・」ジェードの腕が延ばされて、トモに思念を伝えた。『まやか...

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夢の欠片(かけら)・5

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微笑む奏は、少し悲しそうに見えた。************************奏はたまに、理事長として華桜陰高校に顔を出す。理事長室でたまった書類に目を通していると、聞きつけたものか征四郎が顔を出した。「奏さん!わぁ、嬉しいなぁ。一日に二度も会えるなんて。」踏み込んでくる屈託のない笑顔は、学校という場所もあって叶わない恋を思い出させた。「仕事中です。」わざと冷たく見えるように、片眉を上げてみせ...

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深い森の奥の魔導師・19

≪Transfer it absent!(追いはらえ)≫トモが泣きながら放った大きな赤い炎が、キュラの姿をした淫魔を燃え上がらせた。*************************「キュラーーーー!!」トトが飛びつき、とっさに炎を払おうとした。「キュエーー!」≪Transfer it absent!(追いはらえ)≫ジェードとトモは立ちはだかると、なおも消滅の古代呪文を唱え続けた。『助けて、トト!トト!』淫魔の顔と、キュラの顔が入れ替わり...

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夢の欠片(かけら)・6

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振り返ることなく、奏はこれでいいんです・・・と、小さく呟いたが書類を束ねる手が震えているのは隠しようがなかった。*************************奏とモンテスキュウ教授のやり取りを、下手な芝居だと見破ったものの、やりきれない気分の征四郎は、授業に出る気もせずとうとう午後の授業をさぼってしまった。愛馬の流星号を厩舎から引き出して、珍しく鞭をくれた。今は、届かない思いを抱えて、同じ敷地...

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深い森の奥の魔導師・20

大魔導師オメガとユニコーンの護る結界は完璧に魔軍の進軍を阻止していた。聖なる白い一角獣の首を抱き、大魔導師オメガは魔界から噴き上がる熱風に曝され耐えている。豊かな髪が、天上に向かって逆巻いた。≪Servo is ex a taedium res!(忌まわしいものから護れ!)≫朗々と唱える大魔導師オメガの大地を冷やす青魔法が、風に乗って守るべき世界の上を渡ってゆく。魔界の内に溜められた力は奔流となり、地脈を搖がし、背中合わせ...

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Resident of the miniature garden<箱庭の居住者>

初めてこの場所に連れてこられたとき、ぼくは足を踏み込むなり周囲に圧倒された。そこにいるのは、息をのむほど端整な人達ばかりだった。それぞれが美しい一輪花となり、華やかに個性を持って咲き誇っている、そんな気がした。彼らが佇む空間は、まるで天使が造った完璧な箱庭のように見えた。ぼくは跳ね上がった心臓の音が、周囲に聞こえるのではないかと心配しながら、周りを見渡し胸をきゅっと押さえた。広い部屋の中には英国風...

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夢の欠片(かけら)・7

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「奏太郎――――っ!!」義姉の悲鳴を、どこか遠くで聞いた。******************************湖上颯の一粒種「奏太郎」は、颯が家族を残して英国に遊学しているときに故国で生まれた。誕生の電信を受け取った颯の喜びようは相当なもので、奏も普段の規律正しい生活の中で、ただ一度だけスコッチで祝杯を挙げた。男子の出生に喜んだ颯は、命名に悩むことはなかった。「如月の一字をもらいたい。」自分の...

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夢の欠片(かけら)・8

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流星号のいなくなった厩舎で、征四郎は長い間残された鞍を撫でていた。虚ろな瞳は力なく、何も映していなかった。「僕が・・・殺した・・・」****************************流星号が護った征四郎の命は、奇跡的に軽傷で済んだ。家人が駆け付けた時、本来なら重い馬体に押し潰されているはずの征四郎は、流星号の背中に跳ね上げられて気を失っていた。呼ばれた獣医が流星号に声を掛けると、かすかに鼻面...

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