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Archive: 2010年12月  1/6

青い海の底の浄土<作品概要>

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「ずっと君を待っていた」のオロチが、少し力を取り戻して海神だった頃の話です。壇ノ浦に儚く散った安徳天皇は、齢僅か八歳の幼帝で、実はオロチの生まれ変わりと言われています。そういう伝説、伝承が残っていて、妄想が広がって一本のお話になりました。幼帝は、人形に「天児(あまがつ)」と名前をつけ、大切にしていました。幼帝の姿は仮の物で、実は海の宮の龍王は深い海に身を投げて、すべてを思い出します。武士を捨てた兄...

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青い海の底の浄土・1

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雅な人々が群れとなり、肩を寄せ合う船べりに、敵船の作る白い波頭が襲い来る。一族郎党、平家のものはそろって都からはるばる落ちてきたが、とうとう都人は進退窮まって、皆、決済の覚悟を決めていた。守りを固める周囲の船が次々と敵の手に落ち、轟々と荒武者の名乗りが聞こえてくる。此処でつかまっては、どんな辱めを受けるかもしれないと、女達は薄物を深く被ってうつむき、行く末を思ってかたかたと怯えていた。蛮勇とどろく...

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新しいパパができました・15

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白い病院内は、恐ろしく近代的で眩いくらいに清潔だった。広い待合室、受付などはまるでホテルのようだし、重々しい空気じゃないのが気持ちまで軽くさせる。だから、安心して受付の美人のお姉さんに聞けたんだ。「澤田詩鶴君に、会いたいのですが呼んでいただけますか?」瞬時に二人居た受付のお姉さんが見交わした顔がこわばり、ほんの少し口が開いて表情が呆けたようになった。「どちらさまでしょうか?」「津田柾といいます。」...

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青い海の底の浄土・2

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国中を騒がせた治承・寿永の乱も、この地の戦でようよう終わり、もう兵として借り出されることもないのだと、人々はやっと安堵のため息をついた。農民は田畑へ、猟師は山へ、漁師は海原へと生活の糧を求め、再びもとの生活を送ることができる。どこもかも荒れ果てていた。人々にとっては、源氏も平氏も関係ない。ただひたすらの戦の無い平穏こそが、ささやかな望みであった。たぷたぷと寄せては引く、滑らかな海面。兄弟は、日々の...

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新しいパパができました・16

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エレベーターは俺と白衣の男を吐き出し、特別室と書かれたプレートの向こうで何かを投げつけるような物音がしていた。ドアが厚いせいで、何を言っているかはわからなかったけど、きっと詩鶴の声だ。それは、直感だった。思わず手をかけたが内側からしっかりと鍵がかかっているようで、俺はがんがんとドアを叩いた。「詩鶴っ!」途端に、物音と人の声が消えた。「お父さん。入ります。」白衣の男が声をかけると手馴れた仕草で鍵を開...

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青い海の底の浄土・3

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「お上とは、誰であろう?」兄弟は顔を見交わし、密かに見守った。「おそらくは、我らとは反目する、平氏の抱く天皇さま、もしくは上皇さまあたりであろうよ。」「お側近くに仕えていた者に、間違いは有るまい。」「寵童かもしれぬな。」僧に報告し、検非違使所(役所、警察のようなもの)に知らせるべきかどうか、兄弟は思案に暮れた。「ともかく早く、気が確かになると良いのだが・・・」白い顔でとろとろと眠りについたまま、濡れ...

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新しいパパができました・17

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さてと・・・と、振り返った若い医者の言葉に、詩鶴は身をすくめた。「君。津田くんと言ったっけ。聞きたいことがあるなら、聞いても良いよ。」残念ながら回りくどい性分じゃない俺は、真っ直ぐに言葉をぶつけた。「あいつは、何故詩鶴のことを違う名前で呼ぶんですか?」「・・・あいつは・・・すみません、伯父さんって人は、詩鶴に何をしてたんですか?」「後、あんた・・・あなたは、詩鶴の味方?それとも、敵ですか?」「やれ...

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雪うさぎ

BL KANCHORO・冬企画参加作品 【雪うさぎ】【命 一葉(いのち ひとは)】番外編会津地方(今の福島県)の里は雪が深く、その上、身を切られるような地吹雪が吹き上げる。会津の子供達は10歳になると上士以上の侍の身分のものは、日新館という藩校に通い、それより下のものは寺子屋に通って藩校に通う準備をした。子弟はひたすら勉学に励み、父母に孝養を尽くし、お国のために働くことだけを教わった。藩校帰りの相馬...

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青い海の底の浄土・4

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弟は、拾った貴人に乞われるまま、あれから何日も美童の側に付き添い、腑抜け同然になってしまった兄を憂いていた。あの健康で働き者だった兄が、どうしたものか。飲まず食わずの童子に夢中になり、褥に臥した童の面倒を見る兄は、目の下に濃い隈をつくり、どんどんやつれて行くばかりだった。相変わらず、ぼんやりと「主上・・・」と口にしては、兄に縋るばかりの童子であった。「兄者。この有様は何としたことだ。」「ええい、こ...

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新しいパパができました・18

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詩鶴の本当の父ちゃんは、ここにいる澤田天音の父ちゃんと同じやつで、でも戸籍上の父親はベッドにつながれて器械で息をしている男だった。きちんとした家庭を持ちながら、他の愛も欲しかった欲張りな伯父というやつ。全ての不幸は、あの男から始まったということなのか。でも、あいつがいなかったら詩鶴も存在しなかったわけで・・・その詩津さんという詩鶴の母親と、瓜二つなのがきっと詩鶴の不幸だった。親に似ている不幸なんて...

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