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Archive: 2010年05月  1/1

小説・初恋・41

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「そりゃあねっ、源氏の古えより初恋は報われないものと、決まっていますけど。」「もう少し、優しくしてくれたって良いじゃないですか。」「あんなにお慕いしてるのに、奏さまが、お可哀相です。」「あの頃の奏さまにしてみれば、自分のことで精一杯で聡子さまをお助けするなんてご器量、本当はなかったんですからねっ。」「颯さまったら、ちっとも、わかってやしませんっ。」茶器を並べて、紅茶を入れながら白雪は不機嫌に文句を並...

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小説・初恋・42

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白雪の入れた、紅茶は馥郁(ふくいく)と辺りに香った。颯は、談笑の延長で奏に告げた。「如月も、一緒に行こう。」「どちらへ?夕食には、まだ時間があります。」「欧羅巴(ヨーロッパ)」「せっかくですけど、はなむけの食事は洋食ではなく、日本食を予約して有りますが?」白雪はうれしさの余り、確かめるように清輝のほうを見た。「実業家枠が一名あるので、申請しておいたんだ。」「モンテスキュウ教授が骨を折ってくれて、先...

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小説・初恋・43(遥かなり)

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横浜港に係留された、大型客船の甲板は、別れを惜しむ人で溢れかえっていた。慌しく婚儀を終えた、芳賀改め湖上聡子も、夫の見送りに来ていた。官費留学を許されて以来、未来を語る夫をとても頼もしく思っていた。「あなた。お忙しくても、お手紙を書いてくださいませね。」土産も何も要らないから、時々元気でいると知らせて欲しいと新妻は言う。「必ず、書くとも。」大きな旅行鞄を片手に、颯は約束した。兄、清輝の面差しと聡子は...

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小説・初恋・44

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渡欧を慌しく決め、自分もしたいように生きて良いのかと何度も自問したが、今も困窮する自尊心だけ高い華族の話をあちこちで聞き、とうとう政府に持ち掛け銀行創業の決意をした。奏が思いついたのには、大きな理由が有った。公家華族というだけで高額の終生年金を貰ったりしても、彼らは無労働を当然とし、何も考えないで浪費を繰り返すのでいつも呆れるほど金に困窮している。一見、貧困と無縁の貴人達は、伝手を頼って要職に下賜...

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小説・初恋・<あとがき>

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煌く明治時代に過ごした学生達。いつの時代も、青春は変わりなく過ぎて行きます。この作品は、注目作品にも選んでいただきましたが、それよりも嬉しかったのが感想を頂いたことでいた。思いがけず、何人かの方にレビューをいただき、konohanaはすっかり舞い上がってしまいました。その後、短編を書いたり、続編を書いたりしましたが、青年になっても彼等の交流は続きます。資料が乏しくて、困ったこともありましたけど「好き」といっ...

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