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Archive: 2010年01月  1/2

小説・初恋・13

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颯は、すぐさま走り寄ると、白雪と呼ばれた小姓を掬って寝台に放り投げた後、厳命した。「何もしなくて良いから、今日一日、休んでいろ。」奏がきつい視線をよこした。「彼は君が打ったから、熱が出たんだ。」「見てみろ、かわいそうに。すっかり目が空ろじゃないか。」「分からないのか?」「・・・靴下を履かないと、ぼくが授業に遅れる。」呆れた颯が無言になったのに気が付いた白菊が、懸命に袖を引っ張った。「湖上さま。」「ど...

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小説・初恋・14

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「せっかく親元を離れて学生生活を送るのだから、そのくらいは自分で出来るようになれ。」「今のままじゃ、一生何も出来ない京人形で終わるぞ。」「ほら。一人できちんと出来るように、教えてやるから。」椅子に座った奏の肩越しから、釦のはめ方を征四郎に教えるように丁寧に教えてやった。「最初は釦の、端っこをつまむんだ。そう・・・」「慌てなくていいから、ゆっくり。」奏は少し、くすぐったそうにしていたが、嫌そうではなか...

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小説・初恋・15

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「君が周囲に望む支配は、友情の反対に位置するものだ。」「僕は何があっても、君と常に対等で居たいと思うよ、如月。」「友人というのは、そういうものだ。」奏は、ふと悲しそうな顔をした。「君の言っていることが・・・わからない・・」「僕の中には、その定義が無い・・・。」何でも持っているはずの如月奏は、本当は欲しいものは何一つ持っていないことに、気が付こうとしていた。そしてどんなに渇愛しても、決して手に入らない...

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小説・初恋・16(夜会前)

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如月奏と、上野博物館に行くといったら清輝はご遠慮しましょうかと、聞いてきた。「何故?」「何だか鳥の雛の刷り込みみたいですね。なついてくるのが可愛いじゃないですか。」時々、清輝は訳知り顔で意味の判らないことを言う。「言っておくけど、如月は清輝もご一緒にって言ってたんだから。」おそらく、如月は清輝が面倒を見たのを恩に着ているのだと思う、自分でも収拾つかないような荒れようだったから・・・と颯は断言した。...

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あけましておめでとうございます

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今年もよろしくお願いします。実は、パソコンに慣れていなくて、いまだに記事のアップするたび四苦八苦しています。テーマに沿って投稿しないといけないと、年末にやっと判ってちまちま入れなおしました。ここに来てくださった、あなたが大好きです。つたない文章ですが、ご感想などいただけましたらkonohanasakuyaが狂気乱舞いたします。小説書いている人が、多いのに驚いたり頼もしく思ったり・・・いつかお仲間が出来ると、うれ...

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小説・初恋・17

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時の大臣よりも高給取りといわれた、外国人の教授は皆熱心で、東洋の島国での教師生活を楽しんでいた。西洋の王室では、社交界と言うものがあって貴族の子女はある年齢が来ると、王や皇帝の列席の中お披露目されるそうだ。美しく流れるようにダンスを踊ること、それは教養のひとつであり紳士淑女の嗜みであると、モンテスキュウ教授は語った。颯のは、ほとんど柔の組み手のようだと散々言われたが、練習の甲斐あって何とか形にはな...

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小説・初恋・18(夜会)

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約束どおり、奏から夜会の招待状は届けられた。驚くほど上等の借り着に身を包み、馬車すらも友人の借り物で、颯と清輝は如月邸に向かった。「怖じることは有りませんよ、颯様。」「ふ・・・ん。それで、その震えは武者震いというものなのか、清輝。」「勿論です。」こうしてみると、二人は時代の先端を行く若者らしく、恰好がよかった。元々、武道を嗜んできた事も有って、華奢な貴族とは違い、洋服を着ると薄く筋肉の乗った長身は...

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小説・初恋・19

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颯は、何もしらなかったが政財界に顔の利く「如月湖西」という人物は、余人を寄せ付けないほどの強大な人脈と広大な領地、一代では使い切れぬほどの財産を誇っていた。知らないで済むなら、颯の耳に入れたくない話も如月侯爵に関しては多く、父はその話に触れるのを止めることにした。自分にとって、必要かどうかは颯が自分で決めれば済むことだ。室内管弦楽の華やかな演奏が、大広間で始まった。紳士淑女は手を取り合って、明るいア...

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小説・初恋・20

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「卒爾ながら、一差し。」剣の代わりに黒い紫檀の細工の大きな扇子を振って、颯は衆人環視の中、短い剣舞を舞った。時代は変わり維新の動乱で大きく様変わりしたのは、その場にいる官軍に組した者、誰もが経験済みだった。流血の中から新しい時代が生まれ、勝利の美酒に酔いながらも、胸の中では無念に倒れた志士の悲哀を思う。徳富蘇峰の漢詩「京都東山」を朗々と吟詠する清輝の声は広間に響き、楽団の音がいつしか止む・・・幕末...

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小説・初恋・21

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片膝を付き、略式で頭を下げて辞そうとしたとき、西洋人が側に来て、感動の面持ちで颯に握手を求めた。「素晴らしいです!」ジョサイア・コンドルという名を、通詞が伝えた。そして颯は動転しながらも、周囲が驚くほど見事に、流暢な英語で挨拶をした。「英語はどこで?」「私立華桜陰高校で、モンテスキュウ教授に師事しています。」「コンドル、私の自慢の息子なんだ。」父がやってきて、覗き込むように話に入った。「湖上さん。」「...

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