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Category: 優しい封印  1/2

優しい封印 1

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どこにでもある話だと思う。父と離婚後、苦労して自分を育ててくれた母親が、あんたに逢わせたい人がいるのと打ち明けた。「それって、母ちゃん。再婚したいってこと?」恋をした少女のように、頬を染めて母は肯いた。「その人とは仕事先で知り合ったの。涼介の事話したら、仲よくできると嬉しいなって言うの。再婚とか堅苦しく考えないで、自分と友達になって欲しいなって。」「いくつくらいの人なの?」「母ちゃんより6歳年下な...

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優しい封印 2

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母の恋人は、間島求(まじまもとむ)と名乗った。「求でいいよ。お母さんと結婚するけど、涼介君に無理やり「お父さん」なんて呼ばせたくないからね。いつか、自然にそう呼んでくれたら嬉しいけど。」無理強いしない間島に、涼介は直ぐに懐き、しばらく経つとごく自然に「お父さん」と呼ぶようになった。父親と暮らした記憶が、ほとんど皆無だったのもあったかもしれない。涼介が何気なく初めてお父さんと呼んだ時、求は驚いたよう...

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優しい封印 3

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そんな会話を涼介が知る由もなかったが、学校から帰宅したとき、何もない部屋で母が一人泣いていたことがあった。「え?母ちゃん、泣いてんの?どうしたの?求さんと喧嘩でもしたのか?」「ああ、涼介、お帰りなさい。あのね、求さんのご実家に、ご挨拶に行って来たの。あたしは、結婚なんて形はどうでもいいって言ったんだけど……でも、あの人はご両親に別れる気はないって言ってくれたの。それがすごくうれしかったの。涼介……求さ...

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優しい封印 4

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母を送った後、作り置きのカレーで夕食を済ませ、涼介は塾へ向かった。「涼介君、帰ってきたら思いっきりゲームな!」「うん。母ちゃんがいないから、やりたい放題だな。おやつと夜食、買っといてね、お父さん。思いっきり夜更かしするから。」「よっし!今夜は寝かせないぞ~。」「なんだよ、それ。使い方を間違ってる気がするぞ。つか、おれもうすぐ受験だけどいいのかな~。」「たまには息抜きも必要だって。」二人、どこか弾ん...

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優しい封印 5

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必死に伸ばそうとした求の腕は、涼介に触れなかった。涼介を心配する求の声も、直ぐに自分に加えられる痛みに呻く物へと変わった。「お……と……さん……?」「うっせぇな。くそ餓鬼、ちょっと黙ってろ。大人の時間を邪魔するんじゃねぇぞ。」「や、やめてくれ。その子に、ひどいことをしないでくれ。義兄さん、頼むから……」「お前がいい子にしてたら、何もしやしないよ。求~、兄ちゃんはいつだってお前の事大事にしてただろ?なぁ……」...

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優しい封印 6

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薄い性の知識しかなかったが、中学三年生の涼介には男が求に何をしているかわかっていた。耐えきれずに細い悲鳴をあげた求が心配で堪らず、涼介は必死に身体を捩って、静かになった求の傍に行こうとした。薄暗がりの中で男に組み敷かれ、暴行を受けた時、求は涼介を見つめていた。必死に頭を振り来ては駄目だと視線で語る。廊下の明かりが点いたせいで、濡れた頬と苦痛にゆがんだ求の顔が浮かんだ。男が求を離して風呂場へ行った後...

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優しい封印 7

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不安に押しつぶされそうな涼介が、当てもなく繁華街を彷徨している頃、男は間島求の髪を掴み頬を張っていた。唇の端が切れて、青ざめた顎に鮮血がしたたった。「お前、ガキを逃がしたのか?余計な事しやがって。」「……あの子には関係ない……もう、ぼくにも用はないはずだ。ここから出て行ってくれ。」「5年ぶりにやっと再会したお兄ちゃんに向かって、その口のきき方はなんだ?あ~ん?ちゃんといい子になるように躾をしていたはず...

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優しい封印 8

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涼介と月虹の出会いの場面は「夜の虹」と重複しております。既視感を感じた方……正解です。(*⌒▽⌒*)♪涼介が月虹と出会ったのは、それからしばらくしてからの事だった。のろのろと立ち上がった涼介は、路地を出て再び繁華街の大通りに彷徨い出ていた。行き交う者が時折、涼介の顔を覗き込んでは驚いたように離れた。連れの居るものは訝しげに囁き合った。釦のとんだシャツの上に羽織った、脱げかけたスエット。殴られて腫れた頬。幼さ...

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優しい封印 9

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必死に飯をかき込む様子を眺めながら、事情を話したくなれば話すだろうと、月光は軽く思っていた。どうせ些細な理由で家を飛び出て、途方に暮れているだけだろうと見当をつけた。まだ顔に幼さの残る涼介の抱えた苦悩が、抱えきれないほど深刻なものだとは思わなかった。母親の再婚相手と折り合いが悪くて家を出て来たと、涼介はぽつりと嘘をついたきり、がつがつと大盛りの牛丼をお代わりしながら、だから、家には帰れないんだと……...

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優しい封印 10

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鴨嶋組に居場所を見つけた涼介は、玄関で今時珍しい黒電話を見つけ足を止めた。心配しているはずの母親に、連絡だけでもしたかった。「あ、あの……月虹さん。この電話を借りてもいいですか?お母さんに連絡したいです。」「いいぞ。好きに使え。」「ありがとうございます。」そう言ったきり、月虹は其の場に涼介を残し、自室へと消えた。鴨嶋組の電話は、親組からかかってくることが多い。組長が高齢であることもあって、用件の聞き...

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優しい封印 11

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次の日、涼介は朝早くから鴨嶋組の台所にいた。元々、母親と二人暮らしが長かったせいで、大抵の家事はこなせる。「えっと……味噌汁と、卵焼きくらいはできるかな。」冷蔵庫を覗き、有りあわせの食材で朝食を作った。ほうれん草と油揚の味噌汁、一切れだけ残っていたサケの切り身をおにぎりにし、厚焼き卵を作った。「朝っぱらから良い匂いがすると思ったら、朝飯を作ってくれたのかい?」「あ、じいちゃん。おはようございます。勝...

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優しい封印 12

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涼介が繁華街の鴨嶋組に落ち着いた頃、連れ去られた間島求は、闇の中に捕らわれていた。もがけばもがくほど枷はきつくなり、求は自分を逃げ場のないすり鉢状の蟻地獄の巣に落ちたちっぽけな羽虫のようだと思う。「……う……」身体は強張り、節々が痛んだ。長く縛められたせいで、痺れが取れない。遮光カーテンが引かれたままの部屋で、求は時間の感覚さえ失っていた。昼と夜の区別もつかない。連絡の取れなくなった義兄と縁を切って、...

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優しい封印 13

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最初、本家に養子に行ってくれないかと言いだした両親の悲痛な顔を、今も覚えていると求は哀しげに語った。「きっと、彼らにはもうそれしか、お金を作る手段が残されていなかったんだよ。だから、僕は今でも両親を恨んだりしていないんだ。むしろ、助けてあげられて良かったと思っている。」「そう……」「でなければ、きっと首でも括るしかなかっただろうね。ただ一人の子供を手放すんだから、それだけ追いつめられていたんだって思...

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優しい封印 14

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顔を見た途端、息子と夫がいなくなってから、この人は心配のあまり食事を取っていなかったに違いないと、月虹は確信した。化粧の下に隈を隠して微笑んでいたが、笑顔さえも無理して浮かべているように見えた。職業柄、月虹は顔色や気持ちの機微を読むのに長けている。「さあ……、そろそろ行きましょうか。涼介君が待っていますから。」「久しぶりに、落ち着いて食事をした気がします。ありがとうございます。ご心配をおかけしたんで...

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優しい封印 15

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何て言って良いかわからないと涙ぐんだ、涼介の事が少しずつ分かってきた。「月虹さん~…」「なんて顔してやがる。お袋さんが逢いに来てるってのに、そんな面で会わせるわけにはいかないな。ほら、せっかく来たんだから入って洗って来い。」六郎に借りたぶかぶかの派手なジャージをすぽんと脱がせてしまうと、月虹は涼介を軽々と抱えて湯船に放り込んだ。「わ~~っ!」派手な水音を立てて、頭から落とされた涼介だった。「うわっ...

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優しい封印 16

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もう何ともなかったが、涼介は眠ったふりをして、襖越しに大人たちの話を聞いて居た。母にもどんな顔をして会えばいいのか、正直判らない。涼介は父を護れなかったことを、母に詫びたかった。「……川口由紀子と申します。この度は涼介が御厄介になりまして、お礼の言葉もございません。本当にありがとうございました。息子まで失っていたら、私はもう立ってはいられませんでした。」鴨嶋劉二郎は、手を付いた母親をねぎらった。「袖...

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優しい封印 17

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月虹はノートパソコンを持って来て、母親と鴨嶋に見せた。「ちょっと、ご覧になってください。彫り物は、個人でいろいろ工夫しますし、彫師によっても違ってきます。ですから、同じ物はないのですが、たぶん涼介が見たのはこの手じゃないかと思います。どうですか?おやっさん。」「どら、見せてみな。……いや、話を聞くと間島の背負ってるのは、龍魚や滝登りじゃねぇな。」覗き込んだ鴨嶋は、器用にマウスを扱うと、あるページで止...

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優しい封印 18

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涼介は、駅へと母を送って行った。それまでは、普通の生活に戻る母に心配を掛けないようにと、明るく振舞っていたが、駅が近づいてくると声のトーンが落ちた。「お母さん。じいちゃん達がきっと、力になってくれる。お父さんも、諦めてないと思う。だから……だからさ……」母も優しい笑顔を向けた。「お母さんは大丈夫よ。仕事がお休みの日には、涼介の好きなもの作って会いに来るわね。涼介が優しい人たちと一緒で、本当に良かったと...

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優しい封印 19

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「おやっさん。どうやら間島ってのはムショから出た後すぐに、向坂不動産のマンションに入っているみたいです。」「向坂不動産は、関東興産の二つ名だな。周囲が極道マンションって、言ってる所だな。入ってるのも大方極道だろう?」月虹は肯いた。「少しは一般人……食い詰めたライターなんぞが入ってるようですが、まっとうな神経の持ち主なら、知らずにうっかり入ってもすぐに逃げ出すでしょうね。」「違いねぇ。恐ろしい御面相の...

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優しい封印 20

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涼介の母親が越して来る日の朝、劉二郎は月虹を連れて法要に参列した。一度は出席を断った鴨嶋劉二郎が、関東興産先代の法要に顔を出すと言う話は、周囲に色々な憶測を呼んだ。いつも傍らにいる月虹の存在もあり、ついに引退を決意したのではないかと、顔役の面々は噂した。高齢とはいえ最後の侠客と言われる鴨嶋劉二郎の人気は、極道の間でも高い。「鴨嶋の叔父貴、ご苦労様です。」ざっと並んだ黒服の男たちが、並んで頭を下げた...

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優しい封印 21

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鴨嶋劉二郎の乾坤一擲(けんこんいってき)の見せ場が来た。ずいと膝を進めて、劉二郎は向坂に返杯した。鋭い眼光の前に、向坂は内心圧倒されている。懐の深さ、胆力、どれを取っても、目の前の年寄りの方が自分よりも数段上だと認めざるを得ない。くぐってきた修羅場の質が違う……と思った。「なぁ、坊よ。大昔の事だがな、俺ぁ、ムショに行ってる間にバシタをヒロポンで失くしてなぁ……。死んだ向坂が跡目を継ぐときに、言ってくれ...

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優しい封印 22

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男の向かったのは、劉二郎の想像通りなら、おそらく間島の所だった。鴨嶋の話を聞いて、側近が様子を見に行ったに違いない。*****「話をして分かったが、坊には情がある。この年寄りはこの場に出てきて、そう思ったぜ。頭のいい切れ者だとは聞いて居たが、それだけじゃねぇ。おめぇは先代や俺をはるかにしのぐ器だ。俺ぁ、足元にも及ばねぇや。」「鴨嶋の叔父貴……勿体無いお言葉です。」満座の中で褒められて、悪い気のする者...

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優しい封印 23

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出来ればすぐにでも、涼介の父親を救いに行きたいと言う鴨嶋劉二郎の願いは、あっさりと聞き入れられた。「鴨嶋の叔父貴。間島が興奮して暴れると厄介だ。うちの組から何人か助っ人を付けてやりますから。」「それには及ばねぇよ。手向かいするなって一本入れておいてくれればいい。人手なら何とかなるだろう?」振られた月虹は、その場に居る連中に向けて、蕩けるような営業用の極上の微笑を浮かべた。「はい。こちらのお兄さん方...

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優しい封印 24

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現場は汗と白濁と血にまみれ、臭気漂う惨憺たるものだった。間島の部屋に到着したとき、まだカメラは音を立てて回っていた。喧嘩や修羅場には慣れている六郎が、異様な光景に息をのんだ。六郎と数人の助っ人は、思わず寒気を感じ肌を泡立てながらそっと様子を伺った。鍵はかかっていなかったが、踏み込むには、間島が求に近すぎた。何をするか分からない。淫具に拘束された求が、意識を取り戻し、またすぐに痙攣しながら意識を手放...

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優しい封印 25

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※加虐描写があります。ご注意ください。求は薬のせいで、全身に大量の汗をかいていた。果ての無い凌辱から逃れる事は出来ないのだと、間島が意識を手放した求の濡れた髪をかき上げ、耳元でささやいた。「求~、お兄ちゃんが映したやつ、お前の好きな「ゆ・き・こ」って女に送ってやるよ。ほら、求はこんな風に元気にしていますって笑ってみな。大股おっぴろげて、カメラに向かってⅤサインしてみろよ。はい、ち~ず。おい。挿れたま...

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優しい封印 26

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床に転がった求は、どんな扱いを受けても微動だにしなかった。求の脳内は混乱したまま、静寂だった。何をされても、既に諦めきった求が反応することはなかった。閉め切った部屋に監禁され、凌辱され続けた過去の世界に、求は今もいた。吊るされた時に、義兄が何度も同じことを言っていた気がするが、疲れ切った求に、もう思考力は残っていない。遠目に胸が小さく上下して、まだ生きていると分かる。「求~、何でずっとお兄ちゃんの...

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優しい封印 27

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パン……!乾いた音に驚いた六郎が、居間に飛び込んだ時、間島準一郎はどっと倒れ込むところだった。至近距離から撃たれた間島は、ほぼ即死状態だった。「六郎っ……無事か!?」階下に到着した月虹が銃声に気付き、駆けあがったのは全て終わった後だった。呆然と六郎が間島の傍に立ちつくしていた。「……今、片付いたところです。」*****「鴨嶋組さん。うちの間島が、ご迷惑をおかけしました。」月虹と六郎に向かって、向坂組の組...

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優しい封印 28

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その夜、劉二郎は月虹と六郎と久しぶりに酒を飲んだ。祝杯だった。涼介と由紀子は求に付き添って、留守にしていた。「間島も、弟にとち狂ったりしなかったら、向坂の坊の所でいっぱしの極道になっただろうになぁ。」酒がすすみ、劉二郎は珍しく饒舌だった。「若い頃は乱暴者でも、大抵の奴は組織の中に入って修行してゆくうちに、極道らしくなって来るもんだ。極道には昔から「馬鹿でなれず、利口でなれず、中途半端で直なれず」っ...

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優しい封印 29

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病院から帰ってきた涼介は、月虹と六郎から紙ぱんつの話を聞いて、盛大に泣きじゃくった。劉二郎は、涼介に間島は自殺したと伝えた。だから、もう何も心配はいらないからなと、劉二郎は頭を撫でた。「良かったなぁ。涼介。」「うっ……うっ……じいちゃん……ありがとう。あいつが極道って聞いただけで怖いし、月虹の兄貴も六郎の兄貴も、おれのことひよこだっていうけど、おれ、いつかきっと、じいちゃんみたいなかっこいい男になる……っ...

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優しい封印 30

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翌日。涼介を連れて、見舞に来た鴨嶋劉二郎の姿を見た由紀子は、立ち上がると深々と頭を下げた。「鴨嶋さん……ありがとうございました。」「ご主人の様子は?」「お陰様で、数時間前に目を覚ましました。意識ははっきりしています。」求は、無精ひげを綺麗に当たってもらい、静かに横たわっていた。その細い姿は、残酷な凌辱に何日も耐えたようには見えなかった。穏やかに薄く微笑みさえ浮かべて頭を下げる求の姿に、劉二郎は内心ほ...

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