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Category: 沢木淳也・最後の日  1/2

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沢木淳也・最後の日 【作品概要】 

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沢木 隼(さわき しゅん)人と関わることが苦手で、口下手。年齢よりも幼く見える高校生。父親(沢木淳也(じゅんや)の職業は刑事、溺愛されている。同級生の木庭周二と恋人同士。ひどい近視と乱視で、ダサいメガネをかけているが、素顔は絶世の美少年。過去に誘拐されて、心身に深い傷を負った。木庭 周二(こば しゅうじ)沢木隼と子供のころに出会い、ずっと思っていた。高校で出会い、昨年秋にやっと恋人同士になった。隼...

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沢木淳也・最後の日 1

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付き合い始めて、二回目の秋がやってきた。相変わらず気の毒なほど進展の無い、隼と周二だった。去年の秋、病院からの帰り道、凪の水面で煌く金波銀波のように降る銀杏を、ふたり寄り添って眺めた。隼こそが自分の求める、かけがえのない永遠の半身だと、周二は心から思った。三角形の輝く落ち葉を手のひらで受け止めながら、隼と周二はおずおずとキスを交わし、愛を確かめ合った。何も知らない腕の中の隼が愛おしかった。もどかし...

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沢木淳也・最後の日 2

「ねんねさん、お風呂にお湯入りましたよ。」「あ。松本さん、ありがとうございます。」隼を大好きな松本は、いそいそと風呂の支度をしてくれた。隼の好きそうなお風呂グッズを色々揃えてくれている。いくら何でもと思うが、アヒル隊長の玩具まである。「一緒に風呂入ろうぜ、隼。」「ん~、二人で入るには、狭いよ?」「だから、いいんだろ?……くそ親父には内緒な。」「うふふ~」ばかっぷる丸出しの隼と周二が部屋から出て行った...

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沢木淳也・最後の日 3

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沢木は愛用の黒い鞄を手にしていた。「隼。」「あ、パパ。もうお仕事に行くの?」「ああ。今夜からしばらく泊まりで忙しくなるからな。いい子にしてろよ。」「ん~……パパ……さびしい?」隼は父親の元に駆け寄ると、触れた大きな手に頬を擦り付けた。「さびしいなぁ。隼は強いから大丈夫だけどな、パパは隼と離れると思うと、ここにどか~んと大きな穴が開いた気がするよ。隼は、パパが居なくても野獣がいるから平気だな?」「うん。...

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沢木淳也・最後の日 4

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優しく髪をかきやると、周二はことさら明るく告げた。「……きっとすぐに帰ってくるから、心配すんな。」「ん……。」「今までだって、俺といちゃこらしてたら、速攻で邪魔しにやって来てただろ。それに、くそ親父には木本すら太刀打ちできなかったんだ。そんな鬼みてぇな奴が出て行くんだから、でかい山もすぐに片付くって。男らしく待ってようぜ。」「ん……ぼく、漢(おとこ)だもん……平気。漢らしく待ってる。」「それよりさ。……隼。」...

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沢木淳也・最後の日 5

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沢木が木庭組のビルから出て来ると、待ちかねた様子の若い刑事が走り寄って来た。新卒で配属されてきた、鹿島雄一(かしまゆういち)という若い刑事だった。キャリア組なのだが、署長が直々に沢木を呼び出し、しばらく現場で傍に置いて勉強させてくれという。どうやら、断れない位、上からのお達しらしかった。現場で誰の下につきたいかと問われ、鹿島は迷うことなく沢木を選んだらしい。迷惑な話だった。「沢木さん。」「鹿島……?...

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沢木淳也・最後の日 6

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翌朝、木本と松本は気合を入れて、隼の為に朝食作りに励んでいた。大したものはないが、テーブルの上には心づくしが並んでいる。木本は沢木がしていたように、器用に弁当までこしらえていた。「お前、そろそろ坊ちゃんとねんねを起こして……あ、いい。俺が起こしてくる。」「兄貴、俺が起こしてきます!」「いい。俺が行く。」「あ~、兄貴、ねんねの寝顔見たいとか思ったんでしょ?蒼太がいるくせに~。」「やかましいっ。俺は沢木...

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沢木淳也・最後の日 7

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静まった警察の奥で、沢木は顔見知りの鑑識課員と話をしていた。「害者の身元なんだが……」「はい。残念ながら、西署の部長の息子さんでした。指紋と歯形で、すぐに判明したんですが、顔は前の害者と同じく作り変えられていました。どういう理由があって被害者の顔を変えるのか、犯人の意図がわかりません。一応、怨恨の線も当たってるらしいです。……これで、犠牲者は三人目になりましたね。」「そうだな。」「犯人の目的がわからな...

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沢木淳也・最後の日 8

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沢木と鹿島が参加した合同捜査会議は、早朝から行われた。捜査員をすべて班分けにし、それぞれチームを組んで捜査は進められる。捜査に関わる人数は、今回の殺人事件が広域捜査になったことで異例の多さになった。西署の沢木が連れた新人が実はキャリアで、その名前から鹿島警視監の息子だという事は、すでに知れ渡っていた。全国26万警察官のトップになるべき人物は、これまで例外なく警視監二十名の中から選ばれている。鹿島雄...

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沢木淳也・最後の日 9

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沢木は最後まで残り、今回の捜査で直属の上司となった班長に声を掛けた。「警察をかきまわして、喜んでいるように見えると言うよりは、俺には誰かの注意を引きたいだけのような気がしますね。」「なぜそう思う?」「こうすることで自分を見てくれと、存在をアピールしているような気がするんです。プロファイルを否定する気はありませんが、同じ手口で害者は皆、警察官の子息だ。それが、どうも気になって……。まあ、裏が無い以上思...

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沢木淳也・最後の日 10

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生徒会室で過ごす昼休みは、連日、蒼太と隼と周二で、盛大な昼食会となっていた。真ん中に木本が腕によりを掛けた、豪華な弁当が並ぶ。隼の父親の三段弁当に引けを取らない料亭顔負けの手の込んだものだった。「りんご、も~らいっ!」「あ!ぼくのうさぎさん~!や~ん。」「木庭。大人げない。沢木に返したまえ。君はそっちのみかんでも食べてなさい。」「ちっ。」うさぎりんごの争奪戦は、隼の勝利となった。「うふふ~、ねぇ、...

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沢木淳也・最後の日 11

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隼は周二を伴って、呼び出された会議室に向かった。「こんにちは。君が沢木隼くん?」初対面の相手には、気軽に返事をしないように隼は周二に言われている。後ろに立つ周二の恐ろしいほどの気圧(オーラ)に、相手はたじろいだ。「初めまして。沢木さんと一緒に働いている鹿島と言います。」隼を訪ねて来た鹿島は、隼と周二に警察手帳を見せた。勿論、正真正銘の本物だ。「パパの……同僚の人?」「そうです。捜査が長引いて、心配し...

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沢木淳也・最後の日 12

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沢木はいらだっていた。約束の時間を過ぎても、鹿島が戻ってこない。何度電話をかけても、つながらない。「くそっ。鹿島の奴、何をやってるんだ。」腹立ちまぎれに、沢木が何本目かの煙草を踏みつけた時、能天気な声がした。「すみませんーーー!遅くなってしまって……」息せき切って走って来た鹿島を、否応なく怒鳴りつけた。「ばか野郎っ!何が有っても時間は守れ。おまえが遅れたせいで、犯人を取り逃がすことだってあるんだ。恋...

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沢木淳也・最後の日 13

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沢木は、木本に、「もし何かあったら遠慮しないで連絡してください。裏の事はこちらの方が動きやすいこともありますから。」と言われていた。木本のような893くずれに手を借りるつもりはなかったのだが、用を足す振りをして、片手で携帯を通話にした。実際は本部に連絡を入れるべきだったのだろうが、鹿島に知られたくはなかった。ただ、刑事の勘で今誰かに伝えないとまずい気がする。ざっと濁った水が流れた。「そういや鹿島。...

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沢木淳也・最後の日 14

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空中に投げ出された沢木は、落ちながら目の前にあった床に手を掛けた。その位の反射神経はあるが、ぽかりと空いた空間に辛うじて指先だけでしがみつく格好になった。「すごいなぁ。沢木さんって、運動神経もいいんですね。落ちると思ったのに。」「……くっ!」頭上から鹿島が覗き込む。「返事してくれないんですか?冷たいなぁ。」「あ、そうだ、いいものがあるんです。聞かせてあげますね。きっと、僕に返事をしたくなりますよ。」...

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沢木淳也・最後の日 15

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沢木は朦朧としながらも、相手に掴みかかろうとしていた。必死に伸ばした腕を、相手は難なくすり抜けた。「な……にを使いやがった?」「ん~?薬品名で言うなら、パンクロニウム……?なんてね、冗談ですよ。そんなきついものじゃありません。怖いなぁ……そんな恐ろしい顔しないでください。雄ちゃん、なぁにこの人、薬が効かないの?まじこわいよ~。」「パンクロニウムだと……?」筋弛緩剤の一種、パンクロニウムはアメリカでは死刑執...

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沢木淳也・最後の日 16

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落ち着かない周二を尻目に、戻って来た木本は至極冷静だった。木本には沢木の流してきた情報で、ある程度の推理が出来ていた。「周二さん。こういう事は余り言いたくありませんが……。これまで、犯人は遺体を遺棄しちまっていますよね。隠そうともせず、まるで誇示するように。」「だから、なんだ?」「こんなことを言うのは、どうかと思いますけど、大抵、警察(サツ)の行う家宅捜索って言うのは拳銃(チャカ)と日本刀の一振り位...

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沢木淳也・最後の日 17

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ドアホンが鳴り、木本が相手を確かめた。「松本です。」「ただいま戻りました。」隼を迎えに行った松本が帰ってきた。「ただいま、周二くん……何かあったの?」「いや。腹減ってないか?隼。」隼はすぐに周二の腕の中に、すっぽりと抱かれて見上げた。無垢な瞳にじっと見つめられて、思わず視線を外しそうになるが、辛うじて笑みを浮かべた。感が良すぎて、時々周二は困るが、木本が助け舟を出してくれた。強面の木本は、カフェのギ...

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沢木淳也・最後の日 18

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画面に流れる文字を、隼はゆっくりと読み上げた。「本日未明、○○河川敷にて、30代~40代の男性の遺体発見、連続死体遺棄事件との関わり濃厚。身元を明らかにする目立った所持品などは発見されず……。木本さん。もしかして、これ……が、拉致されたパパ……かもしれないってこと?」「それはまだ、わかりません。」「隼。……まだ、確かな情報は何もないんだ。それに、行方が分からなくなってから、そんなに時間も経ってない。」驚いた...

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沢木淳也・最後の日 19

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所轄の警察署から、沢木淳也のただ一人の身内である隼に、遺棄されていた遺体の確認をしてほしいと周二の父親に連絡があったらしい。隼が、木本の方を見た。「木本さん……今の、周二くんのパパから?」「はい。」「面通しに来いって電話ですよね?署長さんから、ぼくに検死に来てくれないかって電話があったんですよね。」「隼。」周二は悲愴な顔で、最愛の恋人を見つめた。「その位わかるよ。ぼくは刑事の息子で、パパのただ一人の...

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沢木淳也・最後の日 20

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木本の運転する車は、滑るように警察署の駐車場に入った。事前に訪問することは告げていたので、数人の関係者が出迎えてくれていた。隼はその中に、顔見知りの署長の顔を見つけた。「隼君。こんなことになってすまないね。」「いいえ。パパの身内は、ぼくしかいないから。」「そちらは木庭組の?」「はい。親父の代理で参りました。木本と申します。」「商売上手らしいな。木庭(組長)が喜んでいたよ。」「いえ、まだまだ若輩者で...

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沢木淳也・最後の日 21

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「隼!」周二の呼びかけに、隼は力なく頭を振る。振り絞るように、言葉を発した。「違います……この人は、パパじゃない。」だが、そこにある遺体の顔は誰もが知る、沢木淳也の顔をしていた。きっと間違いであってほしいと言う気持ちが強すぎて、隼は願望を口にしたと周二は思った。周二が見る限り、高い鼻梁も額も沢木のものだ。思わず周二は、隼を引き寄せた。「隼。動転するのも判るけど……なぁ、良く見て間違えんなよ?」「ぼくが...

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沢木淳也・最後の日 22

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廃ビルから消えた沢木淳也の行方は、いまだしれなかった。*****鹿島とその恋人、二人は薬で動けなくなった沢木を中心にして、両側から支えた。肩を組み、引きずるようにして歩いた。やがて、タクシーを捕まえると後部座席に沢木を押し込んだ。「お客さん。酔っ払いですかい?」運転手が怪訝そうな声を上げる。「体調が悪くなっただけです。何か、気分が悪くなっちゃったらしくて。熱っぽいみたいだから、もしかすると風邪かな...

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沢木淳也・最後の日 23

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閉ざされた病院で、荻野慶介は鹿島雄一の傍らにいた。「雄ちゃん、何でぴぃぴぃ泣いてるの?雄ちゃんが泣くと、僕はすごく悲しい気持ちになるんだよ。ね……泣かないで、気持ちいいことしよう?」「けいちゃん……」「あの子たち、あっさり死んでしまってつまんないよ。ほら、僕のこここんなになってる。慰めてよ、雄ちゃん。舐める?」荻野は鹿島を抱き寄せると髪を優しくなでた。「どうして、震えているの?僕だけだったでしょう?」...

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沢木淳也・最後の日 24

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鹿島は何とか沢木を助けたいと思っていた。初めて自分自身を認めてもらった気がしていた。何も逡巡することなく真っ直ぐに頑張ったと認めてもらったのが嬉しかった。もっと、早く沢木と出会っていたら……と思わずにはいられない。この先自分がどうなろうと、荻野慶介の手から沢木を守りたかった。「雄ちゃん~。コーヒー飲んだらベッドへ行こう?」「けいちゃん。寒いから部屋を暖めて。ね?」「わかった。あ~あ、雄ちゃん、スーツ...

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沢木淳也・最後の日 25

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寝台の上の沢木は、軽く手を握り力の入り具合を確かめた。まだしびれは残っている。全身麻酔が醒める時の恐ろしく気分の悪い状態だった。それでも沢木には、刑事としてすべきことが有った。ゆっくり半身を起こすと、ばきと固まった関節を鳴らす。「……俺の拳銃はどこだ?」「あの……それは、けいちゃんが護身用に持ってゆきました。」「あいつはどこだ?」鹿島は何か言おうとしたが、言葉にはならなかった。捜査を妨害するために、沢...

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沢木淳也・最後の日 26

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聞き覚えのあるエンジン音に、鹿島は慌てた。急いで窓枠に近付き確かめた。「けいちゃんの車が帰って来ました。沢木さん、お願いです。隠れてください。」素人だと思うが、相手は沢木の拳銃を持っているという。今は鹿島の言うとおり様子を見た方が良いだろう。「鹿島。荻野に銃の経験は?」「ハワイと韓国に旅行に行った時に射撃場で少し。……僕が教えました。」沢木は小さく舌打ちをした。まるきり素人ならば、銃を持っていても弾...

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沢木淳也・最後の日 27

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「うああーーーーっ!!」荻野は猛烈な痛みに転げまわった。鋭利な刃物は、筋肉の組織を断ち割る。しかし、それでも荻野は手の中の拳銃を手放さなかった。「くっそ~~!!雄ちゃんが好きだって言うから、殺すのを最後にしてやったのに。何で麻酔が切れてるんだよっ!化けものか、おまえは~~!」すんでのところで、沢木は身体を投げ出し軌道はそれた。しかし、変わらず銃口は沢木に向けられている。「鹿島!銃を取り上げろ!」鹿...

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沢木淳也・最後の日 28

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鹿島の構えた拳銃の銃口は、静かに荻野慶介に向けられていた。「お終いだ。けいちゃん。」「な……なんで~?雄ちゃんがこいつを撃てばいいじゃないか。そしたら、僕はこいつの顔を変えて、またどこかへ捨てに行くよ。雄ちゃん……。ねぇ、雄ちゃんは僕を裏切るの?嫌いになったの?」「違うよ。けいちゃんが好きだから、こうするんだよ。」「やだよ、雄ちゃん~、あっ!やめろー!」沢木は静かに手錠を受け取ると、カチャと硬質な金属...

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沢木淳也・最後の日 29

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沢木淳也は速やかに移送され、警察病院に収容された。*****「し、周二くん。そ……そんなに強くしごいちゃだめ……」「こうか……?」「だめ。出ちゃう……出ちゃう。乱暴にしちゃ、先っちょから垂れちゃう……。」「ええいっ!まだるっこしいっ!もう、そこいらに塗りたくって、苺でも乗っけとけばいいじゃねぇか。かせって!」「や~~ん。」ボールで追加の生クリームを泡立てていた木本は、ぷっと吹いた。「まったく。沢木の旦那には...

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