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Category: 淡雪  1/2

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淡雪の如く 【作品概要】

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旧制高校生x華族 凌辱有りR-18------------------------------------------------------------------------------明治。名門私立華桜陰高校に入学した佐藤良太郎は、初めて故郷を離れ単身寮生活を送ることになる。目立つ同級生の名は、大久保是道(これみち)。華族の彼のそばには美しい前時代的な従者、内藤詩音(しおん)がいた。全寮制の高校で、良太郎は散々に大久保是道に翻弄される。大久保是道は良太郎に執着し、美し...

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淡雪の如く 1

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一人の新入生が全寮制華桜陰高校へ向かっていた。江戸から続く大庄屋の嫡男で、目もとも涼しい彼の名は佐藤良太郎という。難関試験を突破し、晴れて私立華桜陰高校の門をくぐることになった。西洋風の豪奢な三階建ての校舎を眺め、高揚感に気圧されながら、見事な桜並木の下で、感慨深く一人静かに花片の舞う中佇んでいた。「すごいな…。」良太郎は、感動していた。華桜陰高校の新入生は大抵が、まず城のような学舎に胸が震えるほ...

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淡雪の如く 2

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これから良太郎は、出自も身分も違う同級生と出会う。中には白い鶴のような、姿の儚げな美しい少年もいる。風切り羽根を切られた鳥のように、悲痛にもがく少年との出会いは鮮烈だった。白鶴は傷だらけで猟師の懐に飛び込む窮鳥のようにして、良太郎の眼前に現れることになる。失ってやっと気が付くような幼い恋の自覚は、まだ先のことだった。佐藤良太郎本人は何の自覚も無いが、かなりの晩生(おくて)な性質で、言い換えれば、何...

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淡雪の如く 3

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ざわめいていた講堂が、退出してゆく彼らの動きに瞬時に凪のように静まった。ごくりと誰かの喉が鳴る。遠巻きにされて、おそらく構内を見て回っていただけの彼等は、いつか見世物のように人を集め衆人環視の中にいた。いささか面映ゆいこともあるだろうが、元来全寮制の男子寮など、どこもそういったものだったかも知れない。気の毒だとは思ったが、誰もが目をやらずにはおれない二人の存在だった。どうやら主らしい方が口を開いた...

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淡雪の如く 4

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菩薩は、ぴったりとした上等の黒靴を履いていた。「ねぇ。……それは、横浜辺りで、西洋人に作らせた靴だろう?」「そうです。殿さまが若さまのために、横浜で特別に求めたものです。」「そうか、僕の履いているもそうなんだ。普段、履きなれていないものは、知らないと思うが……。東洋人の足は、西洋人に比べると甲が高くて足の幅が広いんだ。だから、ここをシューキーパーというもので、少し広げてやらないといけないそうだよ。」良...

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淡雪の如く 5

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「佐藤さま。こちらでございます。右奥が若さまの寝室です。」続き部屋に運び込み、寝台の上で余裕の無い靴を、思い切って引き剥がすように脱がせば、痛々しい傷を作った足が出てきた。ひどい靴擦れは、元々皮膚が薄いせいだろう、小指の付け根からくるぶしまで出来た水疱が既に潰れて赤くなり、じくじくとしていた。きつい靴を履いていたせいだろう、浮腫みもある。「ああ……、これは酷い。肉刺(まめ)がいくつも出来て潰れてしま...

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淡雪の如く 6

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一方、不満を零した良太郎は、彼等のことを何も知らなかった。大久保是道は周囲から如菩薩といわれるだけあって、外面は確かに気高く柔和な面差しを持っている。だが、実は幼少時の出来事が原因で、内面には深い闇が巣食っていた。精神の均衡を保つために本心を表に出さない是道の昏(くら)い心情は、国表でも詩音以外誰も知らなかった。*****「もう、休む。」「そうですね。色々ありましたから……。足は痛みませんか?」「……ん...

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淡雪の如く 7

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自室に戻って来た良太郎は、部屋に入ろうとしてふと入り口に置かれた柳行李に気が付いた。「お!来たか。」人の気配があるということは、入寮の遅れていた同部屋の生徒が、着いたと言うことなのだろう。声をかけて入った。「失礼する。」「あ。君が、同室の佐藤君か?よろしく頼む。」一目で性格のいいやつだと知れたのは、その屈託の無い笑顔だった。入寮に遅れたのは、何か仔細があったのだろう。「木羽(きば)市太郎だ。」「こ...

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淡雪の如く 8

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木羽市太郎のように優秀な武家の子弟が、どれだけ才能が有っても野に埋もれるしかない事実は良太郎も知っていた。産まれた境遇で一生が決まるのは、江戸も明治もそれほど変わらない。「士族が大変だと言う話は、僕も良く聞くよ。田舎でも殿さまから禄(武士の給料)を貰えなくなった方々が、ご苦労されている。ご家老などご重役の方々は、仕事にありつけたが下々は大変みたいだね。」「食えないと言うのは、君にはわからないだろう...

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淡雪の如く 9

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入学式当日の朝。同室の木羽は母の手縫いの筒袖を着て、良太郎は新品のテーラードに袖を通した。互いに少し、くすぐったい一張羅だった。軽く扉を叩く音に、誰かが訪ねて来たのに、気付く。「誰だろう……?」同じ階に、部屋は7つもあったから、新入生の誰かが挨拶に来たのだろうと思った。「おはようございます。佐藤さま。昨日は大変お世話になりました。」「白鶴……内藤君。」深々とお辞儀する白い小さな詩音の顔を見て、昨夜存在を...

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淡雪の如く 10

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講堂に入れば、良太郎に抱かれた大久保の姿に、地鳴りともつかない大きなどよめきが起きた。本人たちには何の自覚もないので仕方がないが、とにかく良くも悪くも目立つ一群れだった。詩音は校医に靴擦れの話をして、是道の足が痛むので、椅子にかけたまま理事長以下の話を聞く無礼を許してくれるようにと願い出て、それは容易く受理された。布達された高貴な方の御真影の幕が引かれたときだけ、右手で椅子につかまって危なげな片足...

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淡雪の如く 11

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自室に戻ると元士族の木羽市太郎が、何もかも分かった風な口調で告げた。「ああいうのを、生まれついての公家華族というんだろうね。気位の高さって言うのかな。」「まさか泣くとは思わなかった。しかも、あんな赤子みたいな無防備な泣き方をするなんて、おかしいだろう……。」「赤子なら容易いが、自尊心が全ての輩だ。労働の汗も知らないで、思い通りにならないのは世の中のせいで、上手くいくのは自分の力だと思っている人種だ。...

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淡雪の如く 12

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良太郎が訪ねた大久保是道の居室は、特別室で二部屋あり、しかも寝室も別室になっていた。「なんでしょう?」細く開けられた扉の向こうで、詩音が訝しげな顔を向ける。部屋に押し入り眺めた二人の顔から、心情を読み取ったりは出来なかったが、良太郎は潔く一旦頭を下げた。「すまなかった。先ほどは、大久保君に満座の中で恥をかかせて悪かった。一言、二人に詫びねばと思ってな。悪かった。」内藤詩音は、どこか困っている風だ。...

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淡雪の如く 13

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良太郎にはわからなかった。何がいけなかったのだ。「一体、何を考えているんだ、あいつは!」友を友とも思わないふざけた振る舞いをする大久保に、ほんの少し意見をしただけの話だ。自分の家族の誰に問うても、悪いのは大久保だというだろう。幼い自分の弟妹でも、悪いことをすれば叱られるし、謝るのが人として当然なのだ。大した怪我でもないはずなのに、詩音に乞われるまま甲斐甲斐しく良太郎は仕えたのだ。何のよしみもないの...

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淡雪の如く 14

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「大体何で、ぼくなんだと思うよ。他にも力のあるものはいるだろう?」子どものようにふくれっ面を向けた良太郎に、友人が吹き出した。「理由なんてあるものか。恋は盲目というだろう?一途なもんだ。」「その手の冗談は、間違いなく君に血の雨を降らせる口実になるぞ。あれはぼくを困らせて楽しんでいるんだ。」「そんな風に言うものじゃないよ。親愛の情を示す方法がわからないだけさ。」「日本がいよいよ露国と戦になろうかとい...

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淡雪の如く 15

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翌朝。ついに、良太郎は腹を決めた。毎日迎えに来る詩音に、今日こそ断固として断りを入れる。もう足の傷は良くなっているだろうから、教室へは自分で歩いていけというつもりだった。勉学にいそしむために、入寮したのにいつまでも馬鹿げた守りはしていられない。…と、迎えに来た詩音に、良太郎は堂々と正論を語った。「……と、いうことだ。大久保には、すぐに物理学教室で会う。よろしく伝えておいてくれ。」「そんな……佐藤さま。...

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淡雪の如く 16

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「大久保っ!」良太郎は穿いていた袴で足を包み込むと、落ち着いてはたいて瞬時に火を消した。「市太郎、水!」「水差しは空だ。」木羽市太郎が取り上げた室内の水差しには、あいにく足にかけるほどの水は入って無かった。ぐるりと部屋を見渡した良太郎は、階下を覗いて、馬場に有る手動のポンプを認めた。それからの良太郎は素早かった。まるで米俵を担ぐように(これは、後に木羽がそう言った)是道を右肩に担ぎ上げて、馬場まで...

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淡雪の如く 17

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機嫌よく帰ってきた二人の姿に、詩音はどこか不思議そうな顔を浮かべていた。直ぐに湯を使い、着替えを済ませたがその夜から、当然のように大久保是道はひどい熱を出した。独りで食堂に現れて所在無げにする詩音に、良太郎が声を掛けた。「詩音……?一人なのか?」「大久保は?今日から、食堂に来ると言ったのに。」「……若さまは、お風邪を召しました。朝の水浴びが原因です。」「あ。……すまん。」健康優良児の良太郎は、拳を震わせ...

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淡雪の如く 18

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詩音が、大久保是道と屋敷で初めて出会ったのは10歳前の事だったらしい。払った枝を運ぶ位できるだろうと、父の手伝いに初めて入った庭で、二人は出会った。「殿さまは一番上のお兄様がお亡くなりになるまで、本家の奥様に若さまのことをお話になっていなかったようです。奥様はとても気位の高い方でしたので、ご嫡男を失うまで若さまのことは話せぬままだったと父が言っておりました。」「兄上が亡くなったのか。お気の毒に。」...

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淡雪の如く 19

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幼い是道は、本宅に連れてこられて何もわからぬまま、本家の暮らしに馴染もうと懸命に努力をしていたらしい。「いい子にして、大久保のお殿様と奥様に可愛がっていただくのですよ。」母がそう言って送り出したからだ。初めて会った冷たい目をした父の正室を「おかあさま」と呼ぶように言われ、毎朝夕、深々と挨拶をするのが是道の日課だった。「おかあさま。おは……ごきげんよう。」朝も夜も、全ての挨拶は降嫁した公家の娘に合わせ「...

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淡雪の如く 20

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やっとの思いでたどり着いた表戸は、きっちりと頑丈に閂(かんぬき)がかけられ、年老いた門番は是道につれなかった。いつか是道が逃げ帰る様なことが有っても、決して屋敷に入れないようにと、本家から下達されていた。「爺や……。ね。後生だから、母上に是道がきたと取り次いでおくれ。」この通りお頼みします、といって是道は門番に頭を下げたが、固く言いつけられた年よりは頑なだった。「若さまは、ご本宅で大久保家のご当主に...

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淡雪の如く 21

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涙を拭うと決心を告げた。「向こうに……帰ります。爺や。母上に、お人形をありがとうございますと伝えて。」「是道はきっといい子にして、いつか母上をお向かえに参りますから待っててください。」肩で切りそろえた髪を揺らして、帰り道をとぼとぼと歩く是道には、帰る場所はたった一箇所しかなかった。遠く消え行くわが子の姿を見送って、母もまた泣き濡れて立ち尽くしていたと言う。近くに落ちていた草履を抱きしめて、母は二度と...

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淡雪の如く 22

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薄いせんべい蒲団の上でぼんやりと目覚めると、すぐ隣に眠る少年のはだけた寝巻きから臍(へそ)が覗いて見えた。?……ここはどこなのだろう……?のろのろと上体を起こし、立ち上がろうとして立てないのに気が付いた。わたしの…この足の包帯は、どうしたんだろう……?「あ、痛っ……」「こみちちゃん。起きたんだ。」昨日、背負ってくれた少年が、是道の顔を覗き込んで、ふふっと笑った。「あ。お日さま。」一気に思い出して、是道は困...

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淡雪の如く 23

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大久保是道にとって、あのささやかな出会いがとても大切なものだったという詩音の話に、顔が火照るといって良太郎は窓を開けた。妙に気恥ずかしかった。是道の自分への不器用な執着が、あの日の幼い少女と被り、どこか理解できるような気がする。そう言えば、言葉少なく泣いていた子供は、大きなこぼれそうな目をして、固く首に縋り付いた。そこだけは今と変わらなかった。階下の窓の下に医務室の明かりがこぼれている。「あの時の...

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淡雪の如く 24

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是道の側へ急ぐ詩音の耳に、高い大久保本家の正室の声が響く。「合格おめでとう、詩音。」「ありがとうございます。奥方様。」「結局二人とも、合格したわね。仕事をしながらで大変だったでしょうに、良く頑張った事。」「旦那さまが受験をお許しくださったからです。この御恩は必ず御奉公でお返しいたします。」「勿論そうしてもらいます。向こうへ行ったら学友などという面倒なものは、是道さんから遠ざけておしまいなさい。大久...

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淡雪の如く 25

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佐藤良太郎の苦言が効いたのか、熱が引いてからの大久保是道は、人が変わったように穏やかだった。詩音と共に学生食堂に現れて、上級生の軽口にも無難に対応して見せた。むしろ保護者にでもなったように、良太郎と市太郎の方が心配で気もそぞろだった。蓮っ葉な冗談にも癇癪を起こすことなく、誰もが見惚れる笑みを浮かべた是道は、良太郎が気が抜けるほど周囲に溶け込む努力をしているようだった。「如菩薩は本気で寮生活に馴染も...

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淡雪の如く 26

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胸の病を得てからは表舞台から惜しまれながら引いたものの、いまだに重要な事案については大蔵省からも直接官吏が出向く。今日も達磨と言う二つ名の、恰幅の良い日本銀行副総裁が出立の挨拶に来ていた。年は違っていたが、二人はかなり馬が合った。「すみません、如月さん。ご病気療養中だと知っていながら、何度もお邪魔して申し訳ない。」「いいえ。高橋さん。僕で役に立つことなら何でもします。今が大日本帝国の正念場ですから...

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淡雪の如く 27

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それぞれ私室に引き上げた後も、学生達は感動の面持ちだった。渡米前の達磨の演説に、大いに感銘を受けていた。「大久保。達磨副総裁の演説は、実に感動的だったね。鳥肌が立ったよ。」「ええ。実際にあんなことが起きるなんて驚きました。よく無事でいられたものです。」面白おかしく話していた日本銀行副総裁の苦労を重ねた留学時代の話は、実際には塗炭の辛苦だったに違いない。何しろ、先ほどの話によると、達磨は藩命により僅...

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淡雪の如く 28

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階下からだみ声の合唱が聞こえてきた。当時の旧制高校で寮歌と共に広く歌われていたデカンショ節である。『淡雪がちらちら武蔵の宿に アヨイヨイ猪がとびこむ牡丹鍋 ヨーオイ ヨーオイ デッカンショ…』『桜並木の華桜陰の塾で アヨイヨイ文武鍛えし美少年 ヨーオイ ヨーオイ デッカンショ…』……「まずいな。来たか…?市太郎?」「敵はおそらく数名。こちらの人数は割れているから気を付けろよ。詩音と大久保は奥の部屋に隠...

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淡雪の如く 29

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間もなく夏季休暇になろうとしていた。林間学校に行く者もいたが、良太郎は許婚の小夜が東京に出てくるといって、慌しく帰省の準備をしていた。「気立ての良いとても朗らかな娘なんだよ。いつかきっと君に紹介する。あ~、時間があれば、皆に会わせたいんだがな。」浮かれてないでさっさと迎えに行って、牛鍋でもご馳走してやるといいと市太郎が部屋から追い出した。少しの本と着物を抱えて、他の寮生への挨拶もそこそこに良太郎は...

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