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Category: 夢見るアンドロイドAU   1/1

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夢見るアンドロイドAU  1

生体間肝移植手術が成功に終わり、ドナーのあっくんは無事に音羽の元に帰ってきた。レシピエントの兄、厚一郎も予断は許さないが、恋人ルシガの献身的な看病を受け、日々少しずつ快方に向かっている。一番厄介な、免疫性の合併症の発症も、今は抑えられていた。退院後、あっくんは病院の近くに住まいを移し、音羽と一緒に住んでいた。今はまだ、自宅安静が必要だったので、音羽は恋人兼主治医として一緒に居ることにした。これまで...

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夢見るアンドロイドAU 2

抜け殻のように残された、あっくんの七色ぱんつを握り締めて、音羽が茫然としていたその頃。輝く金髪碧眼、美貌の兄の厚一郎の胸で、あっくんはめそめそと泣きぬれていた。「あうっ……うっ……えっ、えっ……ん……音羽の馬鹿ぁ~……。」思いっきり日本名なのだが、上田兄弟は8か国の混血で、誰がどう見ても白人にしか見えなかった。ちなみに、兄の厚一郎の日本でのあだ名は、ラスカ……オスカルという。曾祖父が日系人で、一族の全ての男子...

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夢見るアンドロイドAU 3

あっくんが家出したのち、傷心の音羽は、診察に来た麗人オスカル……(あっくんの兄ちゃんの日本在住の頃のニックネーム)ではなく恐ろしい顔をした従者のアンドレ(こっちもニックネーム、本名はルシガ)の方に睨まれていた。ちゃんと順番を取り、偽名で予約を入れてきたから逃げようもなかった。恐ろしい形相に、看護師もさりげなく消えた。「あ……の~?何でそんなに睨みつけて居るんでしょう……?看護師が逃げましたよ、Mr.スタ...

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夢見るアンドロイドAU 4 

音羽が眺めたあっくんの動画の中に、ショーの最後のメインドレスを着たあっくんに駆けより抱擁し、舐めまわすように何度も熱いキスをする目障りな男がいた。笑顔でいなしてはいたが、さすがにちょっとむかついて、これは誰なんだと追求したら、専属のデザイナーだよと事も無げにあっくんは告げた。嫉妬してくれたの……?と音羽の胸にすりすりと鼻を寄せてくる。だが音羽が思うに、あっくんとキスをした17人の中に、間違いなくこい...

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夢見るアンドロイドAU 5

あっくんに抱きついて、かみつかんばかりの勢いでキスを送りまくりのマルセル・ガシアンという男は、有名デザイナーだがその出生については謎めいている。成功を妬むものは、彼の成功の影にはマフィアの存在があると、半ば本気で噂をしたし、本人に勇気を出して聞いたものは、八角眼鏡の奥の笑っていない凍った眼光に肩をすくめた。才能一つでここまでのし上がる為に、身体を張ったなどという成功者に当たり前の話は、今更誰も語ら...

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夢見るアンドロイドAU 6

「ルシガーーーーッ!!くっそ~~!!黒髪の悪魔め!」休憩時、やっと携帯を開きあっくんに電話を掛けようとした音羽が、着信に気が付き咆哮していた。「ド、ドクター……?」いつも穏やかにアルカイックスマイルを浮かべた東洋人のドクターが、黒髪の男を診察して以来ぶっ壊れていると、看護師たちが噂をしている。勿論、音羽が仕事に私情を挟みミスを犯すことなどはなかったが、元々表情の乏しい音羽の苛立ちを感じて、周囲はどこ...

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夢見るアンドロイドAU 7

そこにいる八角眼鏡のいけ好かないデザイナーは、音羽の目の前であっくんの腰に手を回しでかい蝉のように背後に張り付いてしがみついていた。あっくんの何もない胸に、長い指が乗っていた。音羽のどこかで理性の糸が、ぷつぷつと切れてゆく。「音羽……。あの、インラン……って?どういう……意味?あっくんのことなの…?」あっくんは残念ながら理系脳しか持っていない。日本語は堪能だが、そういった単語までカバーしていなかった。デ...

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夢見るアンドロイドAU 8

可哀想なあっくんは、すんすんと鼻を鳴らしながら泣き寝入りしてしまった。厚一郎は、涙の跡をそっと指でなぞった。小さなころから一途に、音羽だけを思い続けたあっくんは、ほかの誰かに自分がどう思われるかあまり気にしたことがない。呪縛の中にいた頃のあっくんは、いつも周囲にいじめられて学校に行ってもたった一人ぼっちだった。いつもめそめそしていた小さな弟が、ある日突然「あっくんは、お兄ちゃんみたいになれるのかな...

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夢見るアンドロイドAU 9

ベッドサイドの明かりを落とし、厚一郎がリビングに戻るとルシガがうなだれていた。衣擦れの音に気付いたルシガは、思い詰めた顔を上げた。「…すまない。君のひよこを、あんなに泣かせるつもりじゃなかった。」「うん……でも、ひどく泣いてしまったね。厚志は音羽に捨てられるって泣きながら眠ってしまったよ。ルシガ……、わかっているよね。ぼくのここには、厚志に貰った肝臓が入っている。」「ああ……。」「君は手術前に厚志に言っ...

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夢見るアンドロイドAU 10

……溺れていた。長らく触れていなかった最愛の厚一郎の肌は、ルシガの指に応え薄紅の薔薇色に染まってゆく。ルシガは、厚一郎のしなやかな肢体に夢中になっていた。「……はぁ…はっ……ぁ……んっ……。」月明りだけが射す広いリビングに、甘い吐息が満ちてゆく。ルシガの手の内にあるアルテミスの剣は、力を入れて握り込めば押し返すようにじわりと芯を持ち、ほんの少し質量を増やし頭をもたげた。天鵞絨(ベルベット)の手触りを楽しむよ...

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夢見るアンドロイドAU  11

翌日、早朝からfaxがフル稼働していた。リビングの床一面に送られてきたデザイン画が広がっている。驚いたあっくんは、すぐに専属デザイナーに連絡を取った。「どうしたの?マルセル…山ほどデザイン画が送られてくるんだけど……」「次のショーで、君が着る予定の服だ。」ぽっこりと腫れた目を冷やしながら、顔ツボマッサージをしていたあっくんは、驚きながらも何やら嬉しげだった。大きな傷をお腹に持ってからは、メインモデルと...

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夢見るアンドロイドAU 12

その後、厚一郎は高い熱を出し、大学病院の寝台に逆戻りしていた。音羽とあっくんは、別れて以来互いに連絡を取らず、そのままになっていた。苦虫をかみつぶしたような表情で、冷ややかに主治医の顔をした音羽が患者の脈を取る。今日、やっと退院することに決まった。「……何をしたかは思いっきり想像がついていたけど、病院のベッド数には限りがあるし、不摂生の後始末をこんな風に持ち込まないで欲しいものだね。セクスはまだ禁止...

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夢見るアンドロイドAU 13

「やっと、へそまがりが本心を言ったな。音羽。実はこれを、ひよこから預かっていたんだ。もし、音羽が自分の事を聞いたら、これを渡してほしいと言っていた。」「……なんだ?チケット?」そこに置かれたのは、パリ行きの航空チケットとマルセル・ガシアンのパリで行われるショーの特別席の招待状だった。いつ出そうかと思って居たが、良かった…と、二人は笑う。音羽の本心を聞けなかったら、渡さずにおこうと思って居たと、兄の厚...

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夢見るアンドロイドAU 14 【最終話】

驚いた事に、黒服に渡されたものはシャツから靴まですべて、音羽に誂えたようにフィットしていた。訝(いぶか)しげな視線を遮り、黒服は密命通り音羽の支度にさり気なく手を貸した。「こちらへどうぞ。」促されるまま鏡台の前に座った音羽の髪を、違う人間が手際よく整えてゆく。先ほどまでのくたびれた30代後半の男は、見違えるようにいい男になり、鏡の中からじっとこちらを見ている。無精髭を当たっただけで、すっきりと秀麗な...

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番外編 夢見るアンドロイドAUの日常  と「あとがき」

恋人たちの静かな朝は、紅茶の香りと共に……あるわけもなく、壊滅的に家事のできないあっくんは、相変わらず色々やらかしていた。「……あっくん、ちょっと聞きたいんだけどね。このティーポットの紅茶ね、どこのを使った?」「う~ん?いつものを切らしてしまっていたから、残り物のティーバックを使ったの。古かった?」「いや……古いんじゃなくて、ちょっと用途が違うと言うか……。」ひらひらとしたスケスケネグリに、ありえないぱん...

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