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Category: 続 星月夜の少年  1/1

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続 星月夜の少年人形 1

小さな芸能プロダクション、「星月夜」に所属するタレント、矢口桃李(やぐちとうり)の子供の頃の記憶は、二つしかない。それ以外、思い出そうとしても思い出せなかった。会った誰もが驚き、思わず手に入れたいと願う美貌を持つ、桃李の心の中に深く沈められた記憶。やせっぽちで見上げたお月さまさえ、コッペパンに見えた。誰も自分を助けることはないと、物心ついたころには知っていた。お腹の空いた記憶、寒さに震えた記憶、幼...

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続 星月夜の少年人形 2

「そうか。ママはこのお店でお仕事なんだな。お父さんは?」「おとうさん・・・?ぱぱ、いない。まま、お仕事。」どこかぎこちない会話を交わした。黒いサングラスの男は、思い出していた。キャバ嬢やホステスを食い物にする、見た目は極上だが中身は最悪の男がいると、聞いたことがある。元は、ホスト崩れらしいのだが、素行不良で勤めている店を首になるような奴だった。根っからの悪で、まだこの町に流れついて間の無い男にも、...

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続 星月夜の少年人形 3

食事を終えて、帰ってくると赤色灯が回り周囲は大騒ぎだった。大体この町に、警察車両や救急車両が走り回るのは珍しいことではない。初めて食べた、お子様ランチの旗を大切に握り締めた桃李の手を曳いて、花村が桃李の居場所へ近付いたとき事の重大さがわかった。酔客のけんか騒ぎ程度ではないらしい。「幻夜のホストが、やられたらしい。引きずられて行ったそうだ。」「警察は?」「被害者も加害者もいないんじゃね、どうしようも...

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続 星月夜の少年人形 4

成瀬の彼女が急に産気づき、共同経営者の花村は、二人分の仕事を忙しくしていた。苦労の末にやっと愛する女性と共に暮らす夢の叶った成瀬は、一見骨太の男に見えるが、戸籍上の性別は、まだ成瀬彩香(さやか)というれっきとした女性だった。兄弟の反対でいまだに裁判所の手続きができていない。だから、決して子供を持てないはずの成瀬は、経過はともかく愛する女が授かった子供を自分の手で育てることを決めた。生まれた子供は本...

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続 星月夜の少年人形 5

おなべの成瀬が、「好きな女の面倒を、丸ごと見るつもりなんだ。」と打ち明けた時、花村とスワンのママは何度も意見をした。「気持ちは分からないでもないけどさ、所詮赤の他人じゃないか。面倒見切れるわけないと思うぞ。赤ん坊の頃はいいけどさ、反抗期なんぞむかえて見ろ、可愛げのないガキの向こうにろくでなしの男の顔が重なるぞ。悪いことは言わない、止めた方がいい。」人に散々意見をして置いて、自分は何をやってるんだと...

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続 星月夜の少年人形 6

桃李は、母の失踪後、トイレの中に倒れ込んでいたのを発見された。 古いアパートの旧式の水洗トイレが、タンクにためるタイプの和式トイレだったのが桃李の命を救った。 それは本能だと言った方が良いかもしれない。西日の入る暑い部屋で、生きるために桃李は、トイレの水を舐めた。 母の無い生まれたての子猫のように、花村に抱き上げられた桃李は「にゃあ・・・」とかすかに鳴いた。 「にゃあ・・・って?桃李くん?」 目をやっ...

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続 星月夜の少年人形 7

「なあ、あの子、無戸籍だったんだろう?」生まれた子供にミルクを飲ませながら、新米パパの成瀬が聞いてきた。「ああ、荷物をろくに持って行ってなかったから、大家さんと一緒に捜したんだが、母子手帳も、それらしいものは何もなかったんだ。「置き去り児」と言うらしい。」「そうか、このあたりじゃ別に珍しくもないが、置いて行かれた桃李は辛いだろうなぁ。」母親は、キャバクラに勤める時、不思議と偽名を使っていなかった。...

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続 星月夜の少年人形 8

清潔な部屋と、栄養価の高い食事。桃李は、人並みの暮らしを手に入れた。行き届いた職員に見守られて、めきめきと若い身体は健康になってゆく。いつも一人ぼっちで、店の外で母親を待っていた桃李に、年上の友達もできた。桃李が一生付き合うことになる重松紘一郎と言う少年も、いろいろ訳ありの少年だった。話しかけても大きな目をぱんと瞠るだけで、殆ど言葉を発しない桃李の気持ちを、紘一郎は施設の中で、誰よりも先に解ってく...

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続 星月夜の少年人形 9

誰かに必要とされ、大切にされていると感じれば、人はそれだけで生きてゆける、と花村は思う。妻子と別れ何もなくなったと思ったとき、自分だけに向けられた桃李の信頼を忘れない。世間から見ればどん底かもしれない町の片隅で、一人ぼっちの子供たちは、肩を寄せ合って大きくなった。花村は共に暮らしたりはできなかったが、物心共に出来る限りの援助を惜しまなかったし、多少の情緒不安定なところはあっても桃李は期待通りしなや...

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続 星月夜の少年人形 10

おそらく懸命に考えた末に、ここに来たのだろう。「ほら、成瀬さんって、みぃって子がいたころ、ずっと海外向けのロリータ系の写真撮っていたじゃん。天使を凌辱しているような、どきっとするようなやつ。ああいう綺麗なのって、下の毛生えちゃったらもう無理かな。・・・実を言うと、いくら花村さんの所のでも、アダルトで絡むのってちょっと怖いから。」「ごめん、花村さん。おれ、虫が良すぎるかな・・・?」そういう桃李の身体...

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続 星月夜の少年人形 11

桃李の真っ直ぐな眼差しに晒されたまま、花村はその場に立ち尽くしていた。花村が見やっただけで容を変えて勃ちあがった、幼い性器から目が離せなかった。室内の空気が震え、熱を持つ気がする。「花村さん・・・おれ、ね・・・ずっとね・・・」「うん、桃李。わかってるよ。」桃李の言いかけた言葉の先を、花村は知っている気がする。桃李の視線は幼い頃からいつも誰よりも饒舌に花村の姿を追っていた。言いかけた桃李は、言葉をご...

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続 星月夜の少年人形 12

モデル「桃李」の初仕事は、紘一郎に内緒で始まった。雑誌の撮影は、学校の休みを選んで近場で行われることになった。人の居ない早朝の公園の片隅と、裏通りの教会が撮影場所になった。桃李の高校の学生服はブレザーだが、あえて黒い学ランにしようと成瀬が提案した。着こなしに慣れていない方が、初々しくていいからというのが、現場を良く知る成瀬の意見だった。大きめの借りてきたようなサイズの合わない学ランを着て、桃李は初...

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続 星月夜の少年人形 13

薔薇は、もちろん生花が良いのだろうが、予算の都合で造花と両方を使った。羽毛を敷き詰め横たわった桃李は艷めかしいだけでなく、性を感じさせない清らかな印象を受ける。それは素の桃李を知っている、花村や成瀬にとっても意外なことだった。カメラ写りの良いのに驚いた成瀬が、途中から一緒に映るはずだった青年を外して、桃李だけに夢中でシャッターを切った。「花村さん。俺、帰ってすぐに写真に手を入れます。悪いけど、後片...

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続 星月夜の少年人形 14

施設に入ったころの桃李は、やせっぽちで何をしてもみそっかすだった。ボールに触ったこともなかったから、野球もサッカーもまるでできなかった。右往左往を繰り返す桃李に大抵は上級生が切れて、あっちに行ってろと引導を渡した。何しろ、たまに人数合わせに入れて貰っても、サッカーボールを抱えて走る始末だった。しかも、盛大に転んで、膝小僧や顔、あちこちすりむいた。グラウンドの隅っこに出され、膝を抱えた桃李に優しい言...

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続 星月夜の少年人形 15

紘一郎は苛立ちを抱えたまま、花村のマンションを訪ねた。「今時分、誰だ・・・?」ドアフォンの画像に、紘一郎が頭を下げる。「一人で来るのは珍しいな。ま、入れよ。」笑顔で招き入れた。「花村さん、あの・・・桃李は来てませんか?」硬い表情に、何かあったのだろうと想像がつく。「桃李が、どうかしたのか?」椅子をすすめ,飲み物を取りに行った花村は、仕事中だったのだろうか。パソコンの画像が動いていた。花村は、成瀬と...

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続 星月夜の少年人形 16

花村の携帯が、騒ぎ立てた。「はい、花村。・・・ああ?桃李が、わんわん泣いてる?だろうなぁ・・・」ちらと、紘一郎を見やって「スワンで、ちびトラが潰れているそうだ。回収して来い。」と笑いかけた。まるで追い払うように、ひらひらと手を動かした。*******ゲイバースワンのカウンターに、突っ伏して桃李は涙でぐちゃぐちゃになっていた。「何とかしなさい。営業妨害よ。」スワンのママはすっかり機嫌を悪くして、腕組...

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続 星月夜の少年人形 17 【最終話】

紘一郎は、モデルの桃李にそっと触れた。ぴくりと、身体が震え身体が生理的に、逃げようとする。「桃李・・・こっち向いて、おれのこと見て。いつも、おれの後を追ってきたよね。」覗き込む紘一郎に、桃李ははにかんだように頷いた。施設に入ってからは、紘一郎だけが自分の傍にいてくれた。「おれにはいつだって紘ちゃんしかいなかったよ・・・。花村さんのこと好きだったけど、花村さんは絶対おれの方は見てくれないんだ。いつだ...

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続 星月夜の少年人形 番外編 「それから・・・」

スケジュール帳を開いて、花村は贅沢な溜息を付いた。どのページも、真っ黒に埋め尽くされていた。「紘一郎に合わせて、休み入れろったって無理だよ、桃李。悪いが、当分休みは無しだな。」「え~ん。愛する紘ちゃんに、逢いたいよ~~。」「一緒に住んどいて、何を言ってるんだ。嘘泣きを止めて、きりきり働けっ。」「くそぉ~~、いたいけな少年を、過酷な労働条件で働かせるって、労働基準局にちくってやる~!」そう言って、桃...

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