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Category: 紅蓮の虹  1/3

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紅蓮の虹・0

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作品概要天涯孤独の俺に、突然身内が現れた。そいつが現れてから、不思議なことばかりだ。一緒に住み始めて、一気に噴出する俺とそいつの過去の記憶はねじれていた。それは江戸初期、「島原の乱」といわれるビジョンだった。炎の中に傷つき倒れた清らかで無垢な「天草四郎」の誰も知らない真実が零れ落ちる。紅い龍が、燃える島原の空を翔けた・・・  某場所で、思いがけず注目作品に選んでいただきました。お読みいただければ幸...

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紅蓮の虹・1

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ものごころついた時には、すでに「施設」ってところにいたので、いまさら、自分を可哀想とも何とも思わないよ。俺がここにいるのは、腹がへったら飯を食う、みたいなあたりまえのことさ。うんと小さな頃には、ある日山のようにプレゼントを抱えた、黒い服の上品な爺さんがあらわれて・・・今風の言葉でいうなら、ほら「執事」っての?そんな夢を見たことも有った。「ぼっちゃま、お探ししました。」とか、いいながらその場に、泣き...

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紅蓮の虹・2

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あ、失礼しました。俺ってば、まだ名乗っててなかった。「はじめまして、秋月虹(あきづきこう)です。」秋月は当時の市長さんの苗字で、虹は拾われたその日、大きな虹が出てたからっていうよくある話。おどろくほど大きな虹で、片方の足元が切れていて空に向かう大きな動物のようだったって、施設長さんがいってた。そんな風に、けっこう安易につけられた名前だけど、実はわりと好き。人名には珍しいのかな。いつも、一度で覚えて...

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紅蓮の虹・3

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閉めた扉の向こうに、何人かの気配を感じる。そりゃあ、あいつらも気になるよな~。「お父上のお言いつけで、長年お探し申し上げておりました。」「お母上が、ご一族の生活にお疲れになって、屋敷を出奔以来・・・」あの~・・・もう少し簡単な日本語で、お願いします。かいつまんでいうなら、俺のじいさんとばあさんと、母親の折り合いが悪く、母親は俺を連れて家出したってことらしかった。それって、ドラマや漫画でよくある話じ...

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紅蓮の虹・4

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くそったれ!まだ会ったことのない、父親がそこに来ていない事実に俺はむかついた。結局、自分では来ないで迎えの爺さんに、全てをおまかせの、父親と名乗る奴の面を拝みに行くことにした。だってさ・・・行かないっていったら、迎えの爺さんがいい年こいて泣きそうな顔するから仕方なく。「坊ちゃまをお連れしなければ、旦那様に合わせる顔がございません。」とか言うし・・・お涙頂戴の感動場面なんて、ぜったい作ってやらない。...

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紅蓮の虹・5

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別れの儀式が終わって、ほんの少しの荷物を詰めて、外にでた。爺さんがこのままお待ちしています、とかしつこく言うので、仕方なく。正直、親父だなんて言われても、ずっと一人で生きてきたから何の思いいれもありゃしない。期待もしないし、受け入れるだけだ。18になったら、いずれ施設を出る。それが少し早まっただけだ、と思うことにする。色々、手続きとかあるんじゃないのかと思ったが、どうやらそれは大人のすることらしい。...

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紅蓮の虹・6

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爺さんはお抱え運転手に、となりから色々と細かく指示を出していた。時折、車の後ろを気にしていたが、どこかの国の要人じゃあるまいし尾行なんてされるわけないじゃん。それとも、俺が誘拐されてるのか・・・?俺は、物覚えは悪い方じゃないけど、走った道はややこしかった。まるで何かをまくように、薄闇の中何時間も走り、やがてコウモリとか、カラスが似合いそうな不気味なシルエットの建物の前に車は横づけした。まあ、暗くて...

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紅蓮の虹・7

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しなやかな野獣のような、父親と名乗る男は俺に何の説明もしなかった。側にいる、爺さんはそんなわけの分からない有様を、涙ぐみながら静観している。「旦那さま。こんなにお喜びになって・・・」違う気がする・・・「爺さん、こいつを何とかしてくれ。」「暑苦しいって!」わたしの虹・・・と、首にかきついたまま繰り返す男は、シトラスのいい香りがした。言っておくけど、俺は誰かの持ち物になったことなんてないし、これからだ...

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紅蓮の虹・8

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よくよく考えると、ここに来たのは強引に連れて来られたようなもんだ。爺さんは、施設長の目前に証拠書類を山と広げ、大切な俺がいかにして行方不明になったか演説をぶちあげた。広げたアタッシュケースの中に、札束を山ほど忍ばせて経営が思わしくない施設に善意を見せた。坊ちゃまのお世話になった場所です。この先の経営について、困ったことが有れば何なりとおっしゃってください。そんな笑顔で、異例の処置を勝ち取って、俺は...

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紅蓮の虹・9

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「覚えていたのか・・・?」真っ直ぐに俺を見つめる黒い瞳がきらめいた。どこにいても、いつも何かが足りない気がしていたのはこれのせいだったのか・・・?自分の内に巣食うもどかしさが、形になったような気がした。これまで何度かうなされた夢が、やけにリアルに迫ってきたのは一度に色々なことが起こりすぎたせいだ・・・「水をくれよ。」赤い硝子の水差しには、気泡が入っていた。気付けの水を入れた、コップを持つ手が意思に...

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紅蓮の虹・10

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「あのさ。俺、まだあんたの名前も聞いてないんだけど。」あれ・・・?ちょっと暗い顔になった・・・?聞いちゃいけなかったのか?「わたしの名は・・こ・・・」言いかけたとき、思い切りドアが放たれた。「虹!」「わたしの虹が、来たって本当なの?顔を見せてちょうだい!」うわ~、うぜぇ、こいつもかよ!寄ってたかって、頭に「わたしの」って付けるの止めろよっ!と、言いたかったが我慢した。俺は紳士だから、基本女性には優...

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紅蓮の虹・11

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・・・誰かが髪を触ってる・・・薄く目を開けたら、そこには鏡があった。「おはよう、わたしの虹。」おでこに触れる、何かの柔らかな感触・・・?ぶちゅっ・・?「うっわ~~!!??」シーツを引っつかんで、ベッドから飛び降りた。・・・正しくは、落ちた。「何という、挨拶だ・・・」不愉快そうに、そいつは立ち上がった。それは、こっちの台詞だ。何もまとっていない、生まれたままの格好で。朝陽を浴びても、火傷したり、溶け...

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紅蓮の虹・12

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様子を伺いながらの食事は、進まなかった。何で、昨夜親父と名乗ったやつが、今日は若いんだ?赤毛の女は、そのままなのに。「わたしの名は、イレーネよ。」目が合って、その女は言った。「あなたが赤毛なのは、わたしの影響ね。」「殉教者・聖セバスティアヌスの介抱をした聖女と同じ名前なの。」ふ~ん・・・何だそれ。知らないし~・・・「わたしの虹、君の記憶はまだ封印されたままだ。」「食事が終わったら、少しずつ飛んでみ...

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紅蓮の虹・13

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「わかった!今日は一日、ここにいるから。」そういえば、満足かよ。「そのかわり、飯食ったら俺にわかるように全部説明してくれ。」「わけのわからないことに、巻き込まれてるのは確かみたいだから。」「できるなら、分かるように説明して。」そいつは急に元気になった。「わたしの虹。やっぱり君は、わたしの半身だ。」・・・だから、抱きつくなって!そういえば昨日、爺さんが達筆で書いた「虹霓」と言う文字。「こうげい」と読...

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紅蓮の虹・14

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「真っ直ぐ飛べるかどうかはわからないけど、とにかく一度、やってみなきゃね。」こいつと一体になるって・・・?あれかな、多重人格みたいな感じになるのかな・・・?「こっちよ。」部屋数の多い洋館は、迷子になりそうだ。まだ昼前だと言うのに、暗幕を張った広い部屋に陽光はなかった。足元にあるのは、何かの陣形だ。衣類は、有無を言わさず、全て外すようにと言われた。「異物が混入しては具合が悪い」のだそうだ。「これって...

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紅蓮の虹・15

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役目を終えた陣形の中には、長い赤い髪を腰まで伸ばした青年がいた。俺は、まず指が曲がるか試してみた。動きはぎこちないが、上手く行ったのか・・・?両腕を覆っていた青い鱗は見えない。姿見の中には、少し困った顔をした俺。薄く背後に、コウゲイが二重に透けて見える。主人格は、どっちになるんだろう・・・?流れてくるコウゲイの古い記憶はおびただしかった。薄れてゆくわずかな虹の記憶。自然に入れ替わる代謝のように、コ...

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紅蓮の虹・16

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これは、流れてきたコウゲイの記憶だ。まるで映画のワンシーンのようにフラッシュバックして、記憶が徐々に自分のものになって行く。爺さんが掲げた古めかしい旗印は、広いテントの中で色鮮やかにはためいていた。山田右衛門作と言う絵師が、四郎のために描いたものだった。この島原の平城で戦う人々が、死して後はこぞって天国(ハライソ)にいけますようにとの願いが込められているそうだ。益田フランシスコ四郎と言う少年が、後...

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紅蓮の虹・17

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「コウゲイ。」懐かしい友人を呼ぶように、ひらひらと振袖を翻して少年は側に来た。「どこへ行っていたんだ?」「敵の陣容を眺めてきた。」首にかけた、十字架のねじれた鎖を直してやりながら、ふとその白い細首に背負った運命の重さを思う。「コウゲイは空を飛べるから、羨ましい。」どうやら、彼はコウゲイが何者か知っている風だった。「四郎もいつか・・・」「いつか・・・?」「・・・ううん、なんでもない。」色素の薄い少年...

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紅蓮の虹・18

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やっと、すっぽんぽんで泣き濡れてるのに気が付いた・・・間抜けなカッコウだぜ・・・過去に行くのを繰り返せば、このまま段々、過去のコウゲイと同じ感性になってゆくのかもしれない。そうしたら、俺もあの綺麗な少年を愛おしいとか思うようになるのだろうか?・・・できればそこは、勘弁してください。コウゲイとシンクロした後は、俺は食事を取らなくても平気なことに気が付いた。「少しは、神獣らしくなったのかもしれないね。...

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紅蓮の虹・19

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「四郎は確かに、出会った頃から美しく聡明な子供だった。」・・・とコウゲイが言った。今は、身体のどこかに触れているだけで、コウゲイの記憶は自在に俺のものになる。神獣の依代(よりしろ)としてのイレーネは、自分の仕事が無くなったと言って不機嫌だった。正確には、人の場合は尸童(よりまし) というらしい。「よりまし」になった人に祈祷をすると、神霊がこれにのりうつって御託宣をするんだそうだ。「虹はわたしがいな...

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紅蓮の虹・20

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「あれは・・・百合・・・?」異世界から覗いているような、コウゲイの記憶の断片の中に懐かしい友人の面影を見た。長い髪をゆるく束ね、両の手を身体の前にかざしていた。おぼつかない足取りから、盲いてからまだ間もないとわかる。「四郎様」「百合」二人は手を取り合った・・・「わたしは、百合の目になりたい・・・」「四郎様、お姿は百合の胸に焼きついております。」二人の後ろから、コウゲイが手を伸ばし、少女の目に柔らか...

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紅蓮の虹・21

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「まずいよ、コウゲイ・・・」「神様なのに、あまりに人間ぽくない?」そう言うと、コウゲイは真剣に落ち込んでいた。「わたしの浅はかな考えが、四郎を望まない救世主にしてしまったのか・・・」そうだね・・・そんな気がする。「好きな女性の目を治してやったら、きっと四郎がすごく喜ぶだろうと思っただけなのに・・・」「わたしの虹。わたしは、どうすればいい・・?」いや、聞かれても。今頃気が付くなんて、いくら何でも遅す...

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紅蓮の虹・22

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イレーネが部屋を覗き込んだ。「ちょっといいかしら。」コウゲイは、ずっと落ち込んだままだ。神域の存在が、ほんの遊び心で人の世界に介入するだけで、歴史が変わると悟ったのだ。・・・遅いけど。気が付かないよりは、ましなのかもしれない。でないと、この軽薄な龍神はきっと又どこかで、綺麗な少年に声をかけたに違いなかった。俺が一緒にいれば大丈夫だと思うけど・・・俺は人間だしな~・・・でもコウゲイの深い悲しみは、な...

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紅蓮の虹・23

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屋敷を飛び出た俺に、コウゲイが上空から声をかけてきた。「わたしの虹。飛ぶ方が早い。」もうすっかり慣れた、暖かい白い光に包まれて俺はコウゲイと一体になった。傍目にはどんな風に見えているのだろう。紅い龍は、人に関わるべきじゃないというさっきまでの悟りすら投げ捨てて、百合の元に向かった。すぐ側を、雲が流れているのがわかる。結局、コウゲイと俺は二人で一つ、似たようなものなのかもしれなかった。でも、それはず...

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紅蓮の虹・24

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顔色をなくして悪人が退場し、百合はため息をついた。「虹。ありがとう。」「そして、おじさんもありがとうございました。」・・・あ、ストレートにおじさんといわれてコウゲイがへこんだ・・・百合は知らないけど、コウゲイは本当はとても若い龍だった。真実の姿は、俺とタメにしか見えないくらいだ。「いえいえ。お役に立てて「おじさん」もうれしいですよ。」「お金はどうだってよかったんだけど、渡したくなかったの。」「・・...

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紅蓮の虹・25

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「ありがとう、虹。」「うれしかった、来てくれて。」俺は、笑うしかなかった。やがて、懐かしい施設の前で百合と別れた。「今はまだ、誰かの世話になっていなきゃならないけど・・・いつかわたしが独り立ちしたら、会って。虹。」「虹がきちんとがんばっているのがわかったから、わたしも泣き言いわないでがんばる。」コウゲイは側でずっとにこにこしていた。俺はそっとつついた。「何で、ずっと笑ってるんだよ・・・」「いや、可...

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紅蓮の虹・26

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「わたしの虹。素直でうれしいよ。」「だから、その代わり。わたしが四郎の死を受け入れられるまで、もう少しだけ付き合ってくれ。」「わたしも君のように、きっと自分で片を付けるから。」そういいながら、コウゲイは俺の向こうに四郎の姿を見ていた。コウゲイは四郎の死を受け入れて、その後どうするのだろう。もし、俺なら・・・俺なら目の前で百合が、鉄砲の弾や、砲弾に吹き飛ばされても正気でいられるだろうか・・・四郎の側...

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紅蓮の虹・27

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四郎は大勢の人に囲まれて笑っていなければ、物思いにふけっていることが多かった。思わずコウゲイが見惚れたのは、どうやら見た目だけではないみたいだ。小さな村の中を歩くだけで、年寄りから女、子供まで出てきて四郎に手を合わせていた。「おばあさん、足を診てあげましょうか。」杖をつく老婆に気が付いて声をかけると、四郎はあばら家に入っていった。粗末なわらむしろが引かれた寝床で、四郎は丁寧に垢だらけの老婆の足をさ...

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紅蓮の虹・28

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四郎の記憶は、まるで現実味のある公共放送の時代劇のようだ。流れ込む記憶は、コウゲイから流れてくるものなのか、自分のもののように鮮明だった。四郎の家は、よそに比べれば裕福で使用人もいたが、他の農民の生活はひどかった。米など一粒も食べずに、死んでしまう子供達の数も多かった。栄養失調で、母親の乳も出ない。それでも乳飲み子は、母の乳房にぶら下がっていた。目だけ光らせた子供達に、四郎は自分の食事を削って薄い...

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紅蓮の虹・29

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「コウゲイ!」龍は水をつかさどる神か、または眷属(従者)らしい。コウゲイは水神だといっていた。めったに人の来ない自分の場所で、心ゆくまで水浴びしていたらしかった。「四郎、ここに来い。」「・・・濡れてしまう。」やっと、子供らしい笑顔になって四郎は笑った。人外のコウゲイの元でなら素の自分に戻れるということなのだろう。何故だか、俺には四郎の気持ちがすごく良くわかる・・・気がする。コウゲイの尾(髪?)が水...

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