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Category: SとⅯのほぐれぬ螺旋  1/1

隼と周二 番外編 SとⅯのほぐれぬ螺旋 1

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昼下がりの明るいファミリーレストランで、チーズハンバーグ定食を待っているのは、一分の隙もないと言われている稀代の生徒会長「樋渡蒼太(ひわたりそうた)」とその年上の恋人、本名「木本充(きもとみつる)」だった。(ちなみに木本の源氏名は、真人(まこと)と言います)蒼太はともかくとして、どうみても堅気ではない木本にはこの場所はどこか不釣合いで、気の毒になるほどだった。贔屓目に見ても、昼の世界には似合わない...

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隼と周二 番外編 SとⅯのほぐれぬ螺旋 2

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カタ……と、蒼太の眼前に黒い皮のケースを置き、あごをしゃくった。「開けてみな。誕生日プレゼントだ、蒼太」「木本さんが、ぼくに?何だろう……」食事の手を止めて、黒いケースのふたを開けたとき蒼太がどんな顔をしたか。それから、木本は長い間忘れることができなかった。「これも……愛?木本さん。」その場で、うつむいた蒼太はくっと咽んで「木本さんが、くれたのがうれしい」と告げた。だが、蒼太が黒い箱の留め金を開けた瞬間...

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隼と周二 番外編 SとⅯのほぐれぬ螺旋 3

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蒼太が、木本のほうを振り返ることはなかった。明晰な頭脳で学校中から羨望の眼差しを送られる、自信に溢れた生徒会長の姿は、今やどこにもない。雑踏の中を走ってゆくのは、手ひどい失恋で傷ついた一人の高校生だった。『まともに(セクスの)相手ができるようになってから、俺の前に現れろ』引きつった顔を背けて、逃げるように駆ける蒼太の脳内では、木本の言葉がずっと繰返されていた。親以外に、生まれて初めて肌を合わせた男...

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隼と周二 番外編 SとⅯのほぐれぬ螺旋 4

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「何を馬鹿なこと言ってるんだ」軽い気持ちで松本の腕を振り払おうとしたが、振りほどけない力で木本は押さえつけられた。「俺っ、本気ですっ!」「馬鹿野郎っ!松本、離せって、この馬鹿っ!何を考えてるんだっ!」「いやだっ!このまま兄貴が役立たずになっちまうくらいなら、俺はこの先兄貴に嫌われても、こうしたほうがいいんだっ!失恋したときは、嘘でもいいから誰か他のやつを抱けば忘れられるって、以前言ってたじゃないで...

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隼と周二 番外編 SとⅯのほぐれぬ螺旋 5

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いい子だなと、言ってしまってから、その言い方がまるで木本の写しなのだと気がついて、堰を切るように感情が込み上げてしまった。深く顔を覆ってしまった生徒会長に、かける言葉をなくして隼はおろおろしている。「あの、会長?ぼく。何か変なこと……ごめんなさい。余計なこと言ってしまった?」「沢木……沢木……隼。頼むから、少しだけこうしていて」そっと、ドアの隙間に気配を感じて目線を送ったら、周二が肯いた。いつか、周二を...

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隼と周二 番外編 SとⅯのほぐれぬ螺旋 6

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翌日の夕方5時半、いつものようにやって来た隼は、周二を急かしていた。「早くいこ、周二くん。あまり遅くなったら迷惑だから」珍しく二人で出かけるらしい。「これから、どこかへ出かけるんですか、周二坊ちゃん。隼坊ちゃん」「おう。隼がどうしても心配だって言うから、ちょっと様子見にな」「様子見?どなたかの見舞いかなにかですか?」話しているのが、木本だと気がついて周二は話をやめた。元々、人の恋路をどうこうするつ...

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隼と周二 番外編 SとⅯのほぐれぬ螺旋 7

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医師は、蒼太の病状を極めて冷静に告げた。「状態を説明しますと、身体の衰弱がとても激しいです。肺以外にも肝臓と腎臓が弱っています。風邪をひいているのと細菌のせいで右肺は真っ白で水もたまっています。左肺だけが動いているような状況で酸素マスク使用もそのためです」ぐら……と木本の重心が傾いだ。「大丈夫ですか?」「あぁ、すみません。続けてください」「肺炎球菌による肺炎の潜伏期間は1~3日で突然、発熱や悪寒に襲わ...

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隼と周二 番外編 SとⅯのほぐれぬ螺旋 8

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幼い頃から頭の良かった蒼太は学年に関係なく、大学の研究室に出入りを許されるような子供だった。父が物理学者だという影響もあったかもしれない。日本に来る前に父に渡した理論は、その後の父親の研究室の基礎になるほどの、完成されたものだった。大人ばかりの中で切磋琢磨されて、子供らしさの微塵もない蒼太は同じ学年の友人はできなかった。みな声をかけることもなく、蒼太を遠巻きにして尊敬と畏怖の視線だけを送っていた。...

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隼と周二 番外編 SとⅯのほぐれぬ螺旋 9

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それから数日後。まだ頬にやつれの残る蒼太は、木本を呼び出した。あれから毎日、薬を飲む時間になると、飲んだかと確認の電話がかかってくる。食事の有無、睡眠時間もチェックするようになり、入院して以来驚くべきことに木本はまるで蒼太の過保護な保護者のようになっていた。蒼太の知る木本とはまるで別人のように違っていたが、それは蒼太がずっと欲しかった恋人のようでもある。呼び出したのは、都心から外れた田園の広がる場...

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隼と周二 番外編 SとⅯのほぐれぬ螺旋 10

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目を覆われると、情報を遮断されたように感じて、誰もが途端に不安になる。次に何をされるのだろうという不安と、甘やかな期待が頭をもたげる。相手が見えない不安よりも、蒼太が今何を考えてそこにいるのかが気にかかった。時間と空間が闇の中に解けてゆき、相手の存在を空気の流れと吐息で感じるしかない。木本の店のお仕置きベッドで、蒼太は四肢を広げられていつも目隠しをされていた。木本に愛されるときの蒼太は、いつも全身...

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隼と周二 番外編 SとⅯのほぐれぬ螺旋 11【完結】

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愛しい男の骨ばった手が、蒼太の頬をいとおしむようにそっと包み込んで、軽く撫でた。懐で見上げた蒼太のまぶたに唇を落として、背筋が震うような甘い低い声で木本が告げた。「蒼太……見てみな」「あ」「おまえが煽るから、こんなになっちまった。責任取れよ、蒼太」嬉し気に目元を薄紅く染めて、蒼太は木本の頭をもたげた分身に指を伸ばした。細い指が、木本の持ち物に絡みそっと大切に扱く。襖絵に描かれた絢爛の四季の花々に、二...

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