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Category: 世良兄弟仇討譚(江戸)  1/1

世良兄弟仇討譚 豺虎の秋月・1

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豺虎 (さいこ・あらあらしく強い悪人をたとえていう語)藩御用達の大看板を上げる、回船問屋「相模屋」に新しく雇われた用心棒は、役者のような男伊達と評判だった。背の高い男は、鍛え上げられた鋼のような薄い筋肉を地味な着物で包み、新陰流免許皆伝を名乗る兄の「瀬良弥一郎(せらやいちろう)」、一方は女と見まごうばかりの絢爛な花の風情で、男ながら懐剣も小柄(こづか)も使う、流麗な太刀筋の義弟を「瀬良笹目(せらさ...

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世良兄弟仇討譚 豺虎の秋月・2

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豺虎 (さいこ・あらあらしく強い悪人をたとえていう語)数日後、小さな手を行儀よく三角について、末の弟、月華は相模屋の前にぺたりと伏して居た。「旦那さま。兄上たちがお留守の間、お世話になります。」腹を揺らして、相模屋は月華を手招きして側に座らせた。「おお、さすがに幼くともお武家さま。一通りのお行儀作法はお出来になりますな。見目も大層、お可愛らしい」ほろりと、月華の頬に相模屋が予期せぬ甘い涙が伝う。「...

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世良兄弟仇討譚 豺虎の秋月・3

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豺虎 (さいこ・あらあらしく強い悪人をたとえていう語)離れでは、陽の当たる道を歩かせてやりたいと兄が望んだ月華が、相模屋の膝の上でゆっくりと弄られている。相模屋の短い指は、湯上りの月華の寝間着の裾から割って入り、中心でうごめいていた。「あっ……あっ……旦那さまっ……?」さわさわと扱かれて、幼い茎がゆるゆると勃ち上がろうとしていた。先端の滲んだ露を認め、嬉しげに相模屋が上下にこする指先に力を込めた。「お可...

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世良兄弟仇討譚 豺虎の秋月・4

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豺虎 (さいこ・あらあらしく強い悪人をたとえていう語)懐にずっしりと金子を抱えて、三人は相模屋を後にした。昂る気持ちを抑えきれず、竹藪の中に脱いだ着物を敷いて、兄弟は秋風に粟立つ肌を合わせていた。獣のように野良での目合い(まぐわい)であった。「はっ……はっ、もう……兄上、もう、笹目は身体がもちませぬ」ぎち……と、狭い後孔に埋め込まれた兄の深い抽送に、義弟は細腰を引き裂かれそうになっていた。伸ばされた白い...

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世良兄弟仇討譚 月影の鵺 1

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鵺(ぬえ):暗い森の中にすみ、夜、ヒーヒョーと笛を吹くような寂しい声で鳴く。または、伝説上の妖力をもったばけもの。頭は猿、胴は狸、尾は蛇、手足は虎、正体ははっきりとはしない。兄の世良弥一郎は、心陰流の使い手で、細身の鋼を思わせる男ぶりだった。女とも見まごう美貌の義弟の笹目、頑是ない美童の月華と共に、父の残した遺書を手に、力を合わせて仇討を「ひとつ」なし終えたばかりだ。尾張から流れてきたという最近評...

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世良兄弟仇討譚 月影の鵺 2

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鵺(ぬえ):暗い森の中にすみ、夜、ヒーヒョーと笛を吹くような寂しい声で鳴く。または、伝説上の妖力をもったばけもの。頭は猿、胴は狸、尾は蛇、手足は虎、正体ははっきりとはしない。意地悪な兄の所業に、目もとを朱に染めて笹目は少し拗ねて背中を向けた。達せない滾り(たぎり)は、灰の中の熾き火のように内側から身を焦がす。華やかな衣類を着付け、ぐいと女子の着物のように奥襟を抜いてやりながら、逢う前よりも濃くなっ...

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世良兄弟仇討譚 月影の鵺 3

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鵺(ぬえ):暗い森の中にすみ、夜、ヒーヒョーと笛を吹くような寂しい声で鳴く。または、伝説上の妖力をもったばけもの。頭は猿、胴は狸、尾は蛇、手足は虎、正体ははっきりとはしない。天に住む迦陵頻伽が、じっと視線を外さないのが、訝しかった。「まあ、こんなに泣いて。どうか致しましたか?わたくしの顔になにか?」人気役者との逢瀬がやっと叶い、これから過ごす密の時間を思えば幼い舞い手など早く返してしまいたかったが...

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世良兄弟仇討譚 月影の鵺 4

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鵺(ぬえ):暗い森の中にすみ、夜、ヒーヒョーと笛を吹くような寂しい声で鳴く。または、伝説上の妖力をもったばけもの。頭は猿、胴は狸、尾は蛇、手足は虎、正体ははっきりとはしない。白洲に敷かれたわらむしろに手をつき、役者風情、河原者よ、と罵られている「吉沢笹目」の姿があった。「その方、訴によると、船宿に夫のいる身の妻女を引き込み、色事に耽ったとあるがいかが?」「……この身は潔白でございます。不義密通の覚え...

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世良兄弟仇討譚 月影の鵺 5

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鵺(ぬえ):暗い森の中にすみ、夜、ヒーヒョーと笛を吹くような寂しい声で鳴く。または、伝説上の妖力をもったばけもの。頭は猿、胴は狸、尾は蛇、手足は虎、正体ははっきりとはしない。勘定奉行の役宅の奥深く、旅一座の役者に身をやつした笹目は、精を吸って重くなった褥に顔を押し付けられ、そのまま思うさま下肢を弄られていた。 「ああっ、ああっ……もう、お解き放ちくださいませ……む、無体でござ……います。はあぁっ……」「お...

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世良兄弟仇討譚 月影の鵺 6

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鵺(ぬえ):暗い森の中にすみ、夜、ヒーヒョーと笛を吹くような寂しい声で鳴く。または、伝説上の妖力をもったばけもの。頭は猿、胴は狸、尾は蛇、手足は虎、正体ははっきりとはしない。夕暮れの町外れは寂しく、既にもう人通りもなかった。二人連れの影が、往来に長く伸びている。「月華とやら」と、幼い少年の手を引く勘定奉行が声を掛けた。「あい。勘定奉行さま」「そちの兄上は、類希なる上品(じょうぼん)じゃのう」※上品...

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世良兄弟仇討譚 長月の夢喰い(獏)・1

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獏(ばく):体は熊、鼻は象、目は犀、尾は牛、脚は虎にそれぞれ似ているとされるが、その昔に神が動物を創造した際に、余った半端物を用いて獏を創造したためと言われている。人の悪夢を喰う。兄弟達の最後の仇敵である、城代家老、坂崎采女(さかざきうねめ)は胸騒ぎを覚えていた。悪事の仲間、回船問屋と勘定奉行の突然の死が、腑に落ちなかった。6年も前のことだが、勘定吟味役の瀬良忠行に抜け荷の証拠を突きつけられ、仲間...

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世良兄弟仇討譚 長月の夢喰い(獏)・2

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獏(ばく):体は熊、鼻は象、目は犀、尾は牛、脚は虎にそれぞれ似ているとされるが、その昔に神が動物を創造した際に、余った半端物を用いて獏を創造したためと言われている。人の悪夢を喰う。坂崎采女の眼前に、頭を下げた瀬良の遺児は、正室の子である長男13歳の弥一郎。冬の朝、子連れで門前に行き倒れていたのを、そのまま母を側室とし子を養子にした12歳の次男の笹目。そして、最後に側室腹に生まれた末子、まだ6歳の月...

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世良兄弟仇討譚 長月の夢喰い(獏)・3

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獏(ばく):体は熊、鼻は象、目は犀、尾は牛、脚は虎にそれぞれ似ているとされるが、その昔に神が動物を創造した際に、余った半端物を用いて獏を創造したためと言われている。人の悪夢を喰う。冷ややかな坂崎の視線に屈する事無く、まだ前髪の少年は、ひたと正面から幼い弟達を護るように前に座り決意を陳べた。目元の赤いのは、おそらく懸命に零れ落ちるものを堪えているのに相違なかった。「城代さま。我等が父上は心弱い所もあ...

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世良兄弟仇討譚 長月の夢喰い(獏)・4

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獏(ばく):体は熊、鼻は象、目は犀、尾は牛、脚は虎にそれぞれ似ているとされるが、その昔に神が動物を創造した際に、余った半端物を用いて獏を創造したためと言われている。人の悪夢を喰う。6年前。かつて、城代家老の席に着いたばかりの坂崎采女の息女、一粒種の静(しず)と、瀬良の遺児、弥一郎は親も許した恋人同士だった。まるで男雛、女雛のよう……と周囲が言うように、大層可愛らしい一対は、仲良く睦みあい時を過ごして...

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世良兄弟仇討譚 長月の夢喰い(獏)・5

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獏(ばく):体は熊、鼻は象、目は犀、尾は牛、脚は虎にそれぞれ似ているとされるが、その昔に神が動物を創造した際に、余った半端物を用いて獏を創造したためと言われている。人の悪夢を喰う。暗い森で、ヒョーヨとどこか寂し気に、鵺(トラツグミ)が啼く。行灯の影が、なまめかしく溶けた影を揺らしていた。「はぁっ……はっ……弥一……朗さまっ。ああっ……ああ……っ」「静……」間もなく祝言を控えた城代家老の一人娘と弥一郎は、失われ...

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世良兄弟仇討譚 長月の夢喰い(獏)・6

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獏(ばく):体は熊、鼻は象、目は犀、尾は牛、脚は虎にそれぞれ似ているとされるが、その昔に神が動物を創造した際に、余った半端物を用いて獏を創造したためと言われている。人の悪夢を喰う。※加虐表現があります。苦手な方はお読みにならないで下さい坂崎家の奥深く、格子部屋(座敷牢)にはきつく縛された瀬良弥一郎の姿があった。手足を縛められ、梁から下げられた鉤に高く釣られている。足の間には、青竹が肩幅よりも広く入...

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世良兄弟仇討譚 長月の夢喰い(獏)・7

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獏(ばく):体は熊、鼻は象、目は犀、尾は牛、脚は虎にそれぞれ似ているとされるが、その昔に神が動物を創造した際に、余った半端物を用いて獏を創造したためと言われている。人の悪夢を喰う。※残酷な表現があります。苦手な方は以下にご注意下さい兄と慕った城代家老に裏切られ、父はさぞかし無念であっただろう。父に良く似た自分の姿に、坂崎采女は動転しおそらく混濁していた。言うなれば、これまで深く沈めてきた父に対する...

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世良兄弟仇討譚 長月の夢喰い(獏)・8

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獏(ばく):体は熊、鼻は象、目は犀、尾は牛、脚は虎にそれぞれ似ているとされるが、その昔に神が動物を創造した際に、余った半端物を用いて獏を創造したためと言われている。人の悪夢を喰う。「ふはははーーーーっ!!」」地獄の鬼が空気をびりと震わせて、哄笑をあげた。坂崎采女の執拗な責めと加虐の酷さに、最初は喜んで共に弥一郎をいたぶっていた家中の小者達も怖じて、とうに逃げ出していた。格子部屋に居るのは、事切れた...

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世良兄弟仇討譚 長月の夢喰い(獏)・9 最終話

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獏(ばく):体は熊、鼻は象、目は犀、尾は牛、脚は虎にそれぞれ似ているとされるが、その昔に神が動物を創造した際に、余った半端物を用いて獏を創造したためと言われている。人の悪夢を喰う。一座の花形役者、吉沢笹目が芝居小屋に暇を告げたのは、それからしばらく後のことだった。仇討の終了を告げに義母の庵を訪ねたが、既に義母も胸を突いて事切れており、武家の妻女らしく倒れても膝が崩れぬようにきちんと二箇所細い紐で縛...

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