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Category: 短編集  1/1

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十二支 猫とねずみのお話

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昔々。地上の動物たちをお創りになった神様は、年の暮れに皆を集めて告げました。「もうすぐ新しい年が来るね。元日の朝、みんな、神殿にお参りにおいで。寒い時だけれど、早く来た12匹にはいいことがあるよ」「いいこと……?」「なぁに?」動物たちは顔を見合わせました。小さなねずみが手を上げて質問しました。「神さま。いいことって何ですか?お正月に何かくださるの?お年玉とか?」神さまは美しい花の笑顔を向けて、こぼれ...

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パンドラの夏 1

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サッカーのクラブチームで活躍していた、従兄弟の蒼太(そうた)兄ちゃんが大怪我をして病院に運び込まれた。チームメイトのスパイクが、膝を直撃してレントゲンで見ると半月板が見事に割れていたそうだ。元々、膝に故障を抱えていたのを騙しながら続けていましたからねぇと、治療に当たった大学病院の先生が冷たく引導を渡した。「両膝にボルトを埋め込めば一般生活は可能ですけど、選手として元通りに活躍できるかと問われれば、...

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パンドラの夏 2

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恋焦がれていたしなやかな獣が、手負いになって俺の目の前に現れた。熱を持ったアスファルトの裂け目に車椅子の前輪がはまって、懐かしい恋人が汗だくで悪戦苦闘していた。「蒼太(そうた)……?」「あ、先輩。手、貸してください。動けなくなっちゃって」数年ぶりにあったというのに、自然な一言に一気に距離が縮む。膝の怪我はスポーツニュースで流れているのを見たが、選手としては致命的なのだろうと思うほど、頑丈に真っ直ぐに固...

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パンドラの夏 3

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ションベン小僧に、大事な思い人を横合いから掻っ攫われて、数ヶ月。何の音沙汰もない所を見ると、全て上手く行ってるのだろう。嬉しいような、悲しいような。つまらないような、退屈なような。元々、夜の世界とは縁の無かった後輩は、今頃ションベン小僧のサッカーの練習を見てやったり、リハビリで忙しいのだろうと、自分を納得させていた。「木本先輩!」明るい声で、まだリハビリ途中で松葉杖を手放せないらしい、過去の思い人...

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白い開襟シャツの少年 1

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丘の上の別荘に、友人を訪ねた。「明日には、もう東京だな」「うん。成城の家は燃えてしまったけど、麻布のお爺さまの家が無事だったから、そこに身を寄せるんだ」疎開先を引き上げて、もうすぐ眩しい白い開襟シャツの美佐雄は、東京に帰ってゆく。すぐに、退屈な田舎暮らしの事を忘れて、もとの世界に馴染むのだろう。「もう、二度と会うこともなくなるな」田舎の少年が、ふと呟いた。見上げた瞳が夕陽を弾いた。「え、もう逢えな...

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白い開襟シャツの少年 2

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終戦の夏。玉音放送が、戦争と初恋の終わりを告げたんだと、じいちゃんは言った。「……で、結局、成城のじいちゃんとの恋はどうなったの?」じいちゃんは、枕元に飾られている、大分前に亡くなったばあちゃんの写真を取り上げて笑った。「おまえ、ちょっとは、ばあちゃんに気を使えよ。あいつとの恋が成就してたら、おまえがここにいるわけないだろうよ。初恋は神代の時代から清らかなもんと決まってるんだ。」ふふっと笑う、孫は夏...

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セピア色の手帳 1

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「お盆には、海に行くんじゃないよ。海で死んだ人が帰ってくるからなぁ」「はいはぁい!」子供の頃、そんな話を死んだばあちゃんがしていた。ばあちゃん、ごめん。ぼくね、あの日までそんな話、半分信じてなかった。強い日差しの中、パラソルを立てて意地で浜で寝ていた。「乱暴だなぁ」顔の上に覗き込む人影が、呆れて笑った。「そんな焼き方をしたら、皮膚がんになるよ」驚いて飛び起きた。こんな田舎に珍しい金色の髪、青い瞳。...

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セピア色の手帳 2

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差し出された手帳にびっしりと書かれたのは、取りとめもない日記のようで、しかも古臭い文体で書かれていて正直意味が分からなかった。そして、彼の指差す場所に、文字の隣にちいさな丸が打たれているのを認めた。「この丸の意味を知ったとき、いつかここに来なければと思ったんだ」「丸の意味?」「〇のついた字を、一つずつ追ってみて」「〇のついた文字を、拾うの……?」「そうだよ」彼は頷いた。〇が横に打たれた文字を拾って、...

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秋色トレイン 1

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おとうさんが亡くなって、おかあさんはぼくたちのために必死で働いてくれた。ぼくは何とかおかあさんの手助けをしたかったけれど、まだ働けないし小さな弟、里(さと)の面倒を見るくらいしかできなかった。余り丈夫じゃなかったおかあさんも過労で亡くなって、ぼく達兄弟は別々の親戚にお世話になることになった。小さな里(さと)は泣きながら、振り返り振り返りしょんぼりと叔母に手を引かれてゆく。ぼくは、おじ夫婦の家でお世話...

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秋色トレイン 2

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二週間前、おじ夫婦は子供達を残し、入ったお金で旅行に出かけた。外から鍵をかけ、声が漏れないように周到にドアに目張りをした。中に人がいるのが分からないように、電気のメーターが回らぬようにブレーカーを落として行った。残暑の厳しい西日の直接入るアパートで、ぼく等は命を守るためトイレの水を舐めた。動けなくなって、広告の裏にえんぴつで「たすけて」と書いて紙飛行機を飛ばした。だれか……誰か、お願い。ぼくの里を、助...

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秋色トレイン 3

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秋色トレイン 4

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突然……みんな、みんな、わかってしまった。あのまま、別に暮らしていれば里はほんとうに、幸せになれたかもしれなかったのに。叔母さんの車を追いかけて、去ってゆく里を捕らえたのはぼく。里をひどい目にあわせた自分を呪った。……手放したくなかったのは、ぼくのわがまま。「ごめんよ、里。ごめんよ……こんなつらい目にあわせて、ごめんよ。」ぼろぼろと涙が溢れる「幸せの国ゆき」なんてうそっぱちだ。里のいない「幸せの国」なんて...

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実るほど、頭が下がる稲穂かな 2

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遥(はるか)は、本当に次の日、九州行きのチケットを手にして俺の前に現れた。俺達を、空港まで軽トラックで迎えに来た遠距離恋愛の相手、穂(みのる)は、可哀想に少しやつれていた。遥の言うとおり、大学で飼育していた牛豚が伝染病の兆候が出たとかで、全頭、刹処分が決まったらしかった。「おまえ、やつれたな……飯、食ってないんだろ?」そういうと俺の胸に頭を預けて、少し泣いた。「望(のぞむ)が叱ってくれたから、俺、泣...

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実るほど、頭が下がる稲穂かな 3

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軽トラの荷台で、幸せな恋人同士、穂と望は束の間の逢瀬を楽しんでいた。「穂。俺らもう行くけど、元気出せよ?」「ありがとう、望。俺、顔が見れて本当に嬉しかった。叱られてちゃんとしようと思ったけど、やっぱり本物がいいや」きゅと抱きついて腕の中で見上げる顔は、やっぱり可愛かった。久し振りに愛し合った後、離れたくないと涙ぐんだのがいじらしかった。着崩れた作業着のオレンジが、眩しい。「俺ね。遠距離でも上手く行...

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遠山の銀(しろがね)と銅(あかがね) 1

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深い深い、紅葉の山に一匹のお使い狐が住んでいた。名を「銀(しろがね)」という。銀(しろがね)は、北のお稲荷様の使いで、少しは術が使えた。気を蓄え、神の使いとして働き手柄を立てるたびに、妖力は増え神さまにいただくしっぽの数も増える。今は隠してあるが、自慢のしっぽの数も3本有った。いつかは九尾の妖狐になりたかった。しかし、今やお稲荷様に詣でるものも少なくなり、暇なときは自由にしておいでと神さまに言われ...

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遠山の銀(しろがね)と銅(あかがね) 2

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山神さまのお使いで、「銀」は、九尾稲荷の祭られている遠くの祠に使いに行くことになった。そこには白面金毛九尾狐と言う、中国の「周」という国を滅ぼした強い霊力を持った妖狐が祀られている。今は徳の高いお坊様が、殺生石と言う石の中に封印しているそうだ。お坊様が封印する時、欠片となった殺生石が見つかったから、おまえ、ちょいと走ってお納めしておくれと神様に言われた。恐ろしい妖狐も、元々は普通の狐だったそうだ。た...

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遠山の銀(しろがね)と銅(あかがね) 3

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ぐったりと、まだほんのり温みのある山猫の死骸を抱えて、銀は山神さまの前に立った。「どうしたね、銀」「お願いです。神さま。俺に返魂法を教えてください……」ふるふると全身を瘧のように震わせながら、お使い狐は必死だった。「こいつ、まだ何も楽しいこと知らないんだ。冬山の深雪の暖かさも、春の雪解け水の冷たさも。俺と同じで、親のぬくもりも、なんにもっ!」銀の生まれて初めての涙が、ほろほろ溢れた。「銀。分かってい...

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遠山の銀(しろがね)と銅(あかがね) 「冬が来る前に」

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神様のお使い狐の銀(しろがね)が妖力を失って、奥山に閉じ込められてから、はや数年がたっていた。大怪我をした小さな山猫の銅(あかがね)を助けるために、銀は命の次に大切な尻尾を二本、神様に渡し命を救った。その代わりに妖力を失って、銀の見た目はケモノの耳の付いた人型の化け物狐になってしまったけれど、それでも山猫の銅と二人(匹)幸せだった。直ぐ側に銀にすがる、小さな愛おしい山猫がいたから。甘えん坊の山猫、...

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それは野分のように……前編

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人でごった返す上野駅で、少年と警官が揉みあっていた。少年の背にはカーキ色の大きなリュックが乗っていて、警察官はそれを奪おうとしていた。「お願いですっ!見逃してください!お母さんに赤ん坊が生まれるんです」必死に奪われまいとする小柄な少年に、意地になった警察官は詰め寄っていた。「闇で手に入れた食料は、没収と決まっているんだ。直ぐにそれを供出しなさい」「いやだーーーーーっ!!あーーーーっ!!」粗末なリュ...

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それは野分のように……後編

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『かわいい。小さなサムライ』中尉が思わず抱きしめて、少年は懐かしい嗅ぎタバコの匂いをかいだ。『君が一夜の恋を売る売春婦なら、どんなに良いだろうね。そうしたらずっと側において大切に扱うのに。同じ色の髪と瞳と、失った大切な人に似た面差しで、いつか、わたしを好きになってくれたらどんなに良いだろう。でも、わたしたちは永遠に、愛を語ることはないだろう。本当は、君を食べてしまいたいよ。……ケン……』背中にぽつりと...

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命 一葉 (いのち ひとは) 1 

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激しい動乱の時代を超え、江戸が東京と名を変えて、まだほんの僅かしかたっていないころの話だった。ほんの少し前まで武士が大小を腰に差し、将軍様が江戸城に居たことも、移り気な人々は忘れかかっている。東京では、ざれ歌がはやり、散切り頭を叩いてみれば文明開化の音がすると、洋袴の子供達が歌う。幕府に加担した北国の小藩に住む者達は、今や帝に弓を引いた裏切り者よと言われ、日本中のどこにいても肩身を狭くして過ごして...

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命 一葉 (いのち ひとは) 2

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嶋原屋に病の一衛を預けた直正は、やがて主の口利きで、正式に警官の職を得て、同郷の会津藩家老、佐川官兵衛の元で働けるようになった。喜びにこけつまろびつしながら、直正は帰ってきた。「決まったぞ!一衛!積年の念願かなって、職が決まった。これも皆、嶋原屋どののおかげだ。おまえも礼を言ってくれ」「直正様、それはようございました。」一衛は久しぶりに、明るい顔で話す直正を見るのが嬉しい。「おまえも知って居るだろ...

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命 一葉 (いのち ひとは) 3

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一陣の風が起こした葉擦れの音に、思わず窓外に目を向けた。「懐かしいな、この庭先にある紅葉は、まるで会津の奥山のもののように色が濃い」「紅葉……そういえば紅葉狩りに行きましたね。粗末な弁当と糒(ほしいい)を持って」「覚えているぞ。確か一衛はお山は熊が出るのが怖い、山猫にあったらどうしようと、泣きながら付いてきたな」「はい。帰り道は疲れて、お背におぶっていただきました。江戸に来る道中も、一衛は直正様と昔...

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雪うさぎ  【命 一葉(いのち ひとは)】番外編

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会津地方(今の福島県)の里は雪が深く、その上、身を切られるような地吹雪が吹き上げる。会津の子供達は10歳になると上士以上の侍の身分のものは、日新館という藩校に通い、それより下のものは寺子屋に通って藩校に通う準備をした。子弟はひたすら勉学に励み、父母に孝養を尽くし、お国のために働くことだけを教わった。藩校帰りの相馬直正(そうまなおまさ)と友人達は、にぎやかに出てきた門のところでしょんぼりとうつむく少年...

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