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Category: Caféアヴェク・トワ 君と共に  1/1

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Caféアヴェク・トワシリーズ、最終章「君と共に」始めます

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Caféアヴェク・トワシリーズ、最終章「君と共に」を、連載開始いたします。前回から余りに時間が空きすぎたので、主人公二人と簡単なあらすじをあげておきます。松本(まつもと)木庭組所属の構成員。現在、木庭組自体は時代にそぐわない893稼業からは殆ど手を引いている。経済893として、敬愛する兄分、木本の傍で水商売の勉強をしている松本だったが、新しく店舗(Café)をオープンすることとなり、店長に抜擢された。松本...

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Caféアヴェク・トワ 君と共に 1

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固く閉ざされた扉の向こうは静かで、ひそとも音がしない。荒木は珈琲を片手に、ちらりとスタッフの顔を見る。「はい。誰か、松本さんにこれ持ってって~」談笑していたスタッフは、聞くなり顔を見合わせ沈黙した。部屋の向こうにいる松本は不機嫌で、煙のたちこめたそこには誰も足を踏み入れたくない。珈琲を運んで行ったが最後、つかまるのは皆分かっていた。繰り返されてきた会話はこうだ。「なあ……お前ら。昼休憩、暇だろ?、ケ...

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Caféアヴェク・トワ 君と共に2

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直はオークジホテルの広いホールで、多くのシェフと一緒に生き生きと働いていた。笑顔で時折会話を交わしているのを見て、松本はほっと息をつく。人付き合いの苦手な直が周囲とうまくやっていけるかどうか、未だに心配でならなかった。「相良くん。マーブルケーキが減っている。ホワイトチョコの仕上げ頼む」「はい」「客前だけど大丈夫か?」「出来ます」ケーキバイキングの売りには、客前で実際にケーキを作って見せるパフォーマ...

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Caféアヴェク・トワ 君と共に3

直が出向している高級ホテルのケーキバイキングは、名の知れた一流ホテルだけあって、周囲を見渡すと、めかしこんだ女性客が多い。男性客もいないわけではないが、ごくまれだ。松本も一人で覗きに来るのは、気恥ずかしさもあるのだろう。連れの居る今日は、いつになく上機嫌でエスプレッソを口に運んでいた。「直の傍にいるのが、チーフシェフだ。やはり手際の良さが目を引くな」「あの人が木本さんのお知り合いなんですか。背が高...

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Caféアヴェク・トワ 君と共に4

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どちらの仕事も終わった夜、約束通り松本は直と連れだってホテルのバーにいた。チーフシェフの言いたいことは何となくわかっていたので、直はその場所に行くのは気が進まなかったのだが、同席しろと松本が言うので渋々ついてきた。仕事の話では、逃げるわけにはいかない。松本と飲みに出るのが初めてだったので、そこだけは少し楽しみだった。「あ。おいしそう……」洒落たカクテルが運ばれてゆくのを、視線で追う直に、チーフシェフ...

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Caféアヴェク・トワ 君と共に5

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申し訳なさそうに、バーテンダーが小声でささやいた。「あのぅ、お連れ様がお飲みになったのは、スクリュードライバーです。すみません。後ろで飲んでいたカップルの男性が頼んだものと同じものをくださいとおっしゃったので、何も考えずにお出ししました。口当たりがオレンジジュースと似ているので間違われたようです……喉が渇いていたとおっしゃって、続けて3杯くらいはお飲みになったかと」「まじか~。つかお前、こんなにアル...

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Caféアヴェク・トワ 君と共に6

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今でこそ落ち着いているが、木庭組に世話になり始めたころの松本は、感情のふり幅が激しかった。一度、頭に血が上ってしまうとささくれた感情は、自分では抑えがきかない奔流となる。荒れ狂う衝動に任せたまま、相手が手向かいできなくなるまでぶちのめし、相手の流した血の海の中でやっと我に返るような塩梅だった。やりすぎだと文句を言われても、自分に非がない以上決して頭は下げなかった。松本を拾ってくれた木庭組の面々は、...

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Caféアヴェク・トワ 君と共に7

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温かい灯りのともる場所に、松本は足を踏み入れた。「まあ、飲め」「いただきます」「面を見せるのも久しぶりだな。親父が寂しがってたぞ」「後で上に顔出してきます」直のアパートから直接、木庭組に顔を出した松本は、木本に勧められるままグラスを重ねた。心に刺さった小さな氷の棘が、この場所にいるだけで溶けるような気がする。「兄貴。親父さんの具合はどうなんすか?」「相変わらずだな。季節の変わり目は古傷が痛みだすか...

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Caféアヴェク・トワ 君と共に8

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一方、Caféの方に出勤してきた直には、松本の不機嫌の理由が皆目わからなかった。眉間に皺を刻んだ松本の傍に、おずおずと近づいてみたが、ぎこちない会話しか交わしてくれないので途方にくれていた。「あの……店長?」「ああ?」「おはようございます……」「ああ」「フレンチトーストに蜂蜜かけますか?」「ああ」「コーヒーはブラックでいいんですよね?」「ああ」「おれ……席を外した方がいいですか?仕事の邪魔ですか?」「……」空...

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Caféアヴェク・トワ 君と共に9

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荒木は思い出した。これまで松本の恋は成就したことがない。不器用と言ってしまえばそれまでなのだろうが、中学の頃から落ち込む姿を何度も見てきた荒木だった。元来、惚れっぽく一途な質だが、こらえ性がないのがその一因だった。落ちている消しゴムを拾って手渡したときに、指先が触れ合っただけで恋だと勘違いするほど惚れやすいくせに、相手が誰かと親しげに話をしているのを一瞥しただけで、一方的に身を引いて終止符を打つ。...

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Caféアヴェク・トワ 君と共に10

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血相を変えた松本は、転がり込むように目当ての病院に到着すると、入り口にある救急用の緊急ボタンを連打した。「すみませんっ!急患です!」インターホンから、どうされましたかと声がする。「お願いしますっ。すぐに診てください。血が止まらないんです!」「出血されているんですね?わかりました。すぐに先生を呼びますから、落ち着いてお待ちください。解錠しますから、お入りになって」「はいっ!」慌ただしく白衣に袖を通し...

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Caféアヴェク・トワ 君と共に11

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上から伸縮性の包帯を巻いてもらって、処置は終わった。「数日たてば、仕事にも差し支えはないと思いますよ」「ありがとうございます」「水仕事をしても大丈夫なようにしておきましたけど、一応明日、見せに来てください。傷がつくまでしばらく絆創膏はそのままですけど、包帯は毎日交換に来てください」「わかりました」看護師の言葉に二人して神妙に頷く。「はがれないテープだから入浴もできるけど、お風呂に入るときもそのまま...

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Caféアヴェク・トワ 君と共に12

松本は慌てて顔を覗き込んだ。「泣いているのか?傷が痛むか?」「ち、違います……でも、朝からずっと、店長が目も合わせてくれなかったから……俺、悲しかったです。Caféに居場所がなくなるのかと思ったら、頭が真っ白になって……気が付いたら、手が血まみれになっていて……どうしていいか、わからなかった……」「悪かった。お前が悪いんじゃない」立ち止まって、松本は頭を下げた。「これだけは言っておくが、直を信じていないわけじゃ...

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Caféアヴェク・トワ 君と共に13

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今朝とは別人のような態度の松本の背中を、力いっぱいがんと荒木が叩いた。「いてっ」「悩めるオーナー、そのまま、しけこむかと思ったぜ」「まさか。こう見えても常識人だぞ?俺はいつだって仕事を優先してるだろ?」「へ~。まぁ、悩み事が解決したんなら、俺には何の不服もないけどさ」「本当はさぼる気だったんだが、表通りからお前が仁王立ちしているところが見えたんで諦めた。お前を怒らせると、後が怖いからな」「直の傷の...

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Caféアヴェク・トワ 君と共に14

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最初に足を運んだのは、駅前の有名店だった。「あそこです、店長。外の赤いテントが目印です」新進気鋭のパティシエはフランスで大きな賞を獲って以来、テレビでも時折顔を見るようになった。直とそれほど年齢も変わらないはずだ。「こんな近くにあるんだったら、もっと早く来ればよかったな」「仕方ないです。店長もおれも忙しかったですから」「そうだな」「ここは、このミルフィーユが人気なんですよ。バニラビーンズがたっぷり...

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Caféアヴェク・トワ 君と共に15

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「解いてください、店長……」「そんなに嫌か?」松本は、直の目に怯えの色が混じっているのに気づいた。師と仰いでいた尊敬する男に蹂躙された過去は、時折こんな風に、何かをきっかけにして深く沈んだ場所から突然頭をもたげてくる。嗜虐に曝された忌まわしい過去は、今も直をとらえて放そうとはしない。松本の知らない過去は腹立たしかったが、傷ついた直の心をいたわるような甘いキスを贈った。「違うって。直はセクスの時、俺の...

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Caféアヴェク・トワ 君と共に16

とくんと心臓の音が跳ねる。「病院の帰り道の話の続きだけどな」「……はい?」「俺が拗ねていた理由を聞いただろ?」「はい」「教えてやるけど、絶対笑うなよ?後、口外無用。すぐ忘れろ、いいな?」「大丈夫です。おれ、何があっても、店長のこと大好きですから……」まじめな顔で、こくりとうなずいた直に、仕方なく松本は打ち明けた。「あのな……覚えていないだろうけどな、酔っぱらった直が、俺の知らない奴の名前を呼んだんだよ。...

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Caféアヴェク・トワ 君と共に17

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この人を失いたくないと、本気で思う。直は深い口づけに応えた。松本が自分にくれる優しさを、もしも『愛』と呼べるなら、どれほど毎日が輝くだろう。身体が満たされるだけでは物足りず、心まで欲しいと思うのは余りに強欲すぎるだろうか。「店長は、まあちゃんに少し似てる気がします」「そうか?どんなやつなんだ?」「まあちゃんは、店長みたいにいつも俺を支えてくれました。お父さんに叱られて泣いていたら……直には直のいいと...

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Caféアヴェク・トワ 君と共に18

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翌日、二人は直の故郷に向かった。「ほら。あそこに見えるでしょう?」「あれって……」墓じゃねぇかと、ひとりごちた。直の従兄が鬼籍に入っているとは思いもよらず、松本は直が、故郷に住む従兄を紹介するものとばかり思っていたからだ。風に混じって爽やかな柑橘の香りがする。ぐるりを墓地が囲む山の中腹に、目指す場所はあった。「えらい豪勢な墓所だなぁ」「ご先祖様が、城を預かる家老……?とかだったって聞きました。だから大...

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Caféアヴェク・トワ 君と共に19

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それに運が良かったと、松本は笑う。「俺と出会っただろ」「幸運でした」「冗談だ、ばか。それよりもな、俺はこれまで不思議だったんだ」「何がですか?」「どういえばいいのかな。直は俺のことをまっすぐに好きだというだろう?普通に考えたら、男が好きだなんて後ろめたいと思うはずだろ?ましてや、直の家はあんなにでかくて、身内もちゃんとしているから……言い方は悪いが、俺みたいなタイプと一緒にいるのは道を外れるっていう...

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Caféアヴェク・トワ 君と共に20

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照れ笑いを浮かべた松本は、直の双眸に盛り上がった雫を認めて慌てた。「あっ……迷惑だったか。自分の気持ちだけ押し付けちまって、悪かった」「違い……ます。……そんな風に思ってくれているなんて、嬉しくて。期待しないようにしていたから」「なんでだ?」「片思いかもしれないって思ってました」「はっ?」松本は唖然とした。「片思いって……直……何を言ってるんだ。俺は何度も好きだって言っただろ?何度も抱いたじゃないか?」「そ...

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Caféアヴェク・トワ 君と共に21

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「店長……匡さんに、まあちゃんの事を紹介していたんです。」「会わせたい従兄がいると聞いて、何も考えずに来てしまいました。言い訳になりますけど、お宅には帰りに伺うつもりでした」鼻の頭に浮いた汗をそっと清楚なハンケチで抑えた直の祖母は、思いがけないことを告げた。「折角参ってくれたけど、そこのお墓に、正樹はいないのよ」「え……っ?」「知らなかったでしょう?あの子がなくなったとき、直はまだ幼かったから、誰も本...

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Caféアヴェク・トワ 君と共に22

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母親の居ない直を、きっと従兄と共に支えていたのだろうと思う。「まあちゃんは県外のホスピスに転院したって聞いたよ。それからすぐに、お父さんから亡くなったって知らされて、おれはすぐに会いに行きたかったけど、葬儀も終わったからって会えなくて……お父さんは、あんな奴は一族の面汚しだから、遠くの病院で死んでくれて良かったって言ったんだ。」唇を震わせる直の姿に、正樹という青年がどれほど直にとって、大切な存在だっ...

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Caféアヴェク・トワ 君と共に23

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「正樹が亡くなってから、貞夫さんも時々あなたのことを話すようになってね。ほら、前に松本さんがわたくし宛に週刊誌を送ってくださったでしょう?」「直が載ったホテルの特集号ですね」「あの子ったらね、本屋に二十冊も注文したのよ。取引相手に、うちの愚息もなんとかやっているようですなんて、配り歩いたりしてね。笑っちゃうわよね、あの強面で、こっそりホテルのケーキを買いに行ったのよ」祖母は楽しそうに笑ったが、直の...

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Caféアヴェク・トワ 君と共に24 【最終話】

終電車に揺られながら、松本はいつかと同じように、肩に直の重みを感じていた。車窓に二人の並んだ姿が映っている。松本はそっと、包帯の巻かれた指先に触れた。もう、二度とこの手を放さない。二人で共に同じ夢を見ようと、松本は誓った。「直。もうすぐ着くぞ」「ん……」「長い一日だったな。疲れたか?」「匡……さん……」松本の腕に、直は猫のようにすりすりと鼻先をこすりつけた。もうしばらくすれば、光の溢れる懐かしい街に電車...

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